たったひとつのシンプルな答え
良く出来ている部分は本当に良く出来ているんです。だからもったいない!(イラスト 橋本モチチ)
もっとも、本来格闘ゲーム部分の調整は非常に繊細で難しく、短い時間で指摘されている部分を修正する為に大きくシステムをいじった為にゲームバランスに大きな影響を与え、格闘ゲームとして楽しみたいユーザーからは、アップデートに対しても不満が出ています。
また、新キャラクターの無償提供や、キャンペーンモードのエネルギー4倍回復といったことに対しては喜びの声もあがっていますが、根本的な解決になっているかといえば難しいかもしれません。何故なら、本質的な問題はゲームの細かい調整の話ではなく、信頼を失ったという点にあるからです。
ここまで厳しいお話をたくさんしてしまいましたから、ジョジョASBは面白く無いゲームである、駄作であると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ガイドがプレイした限りではそんなことはありません。
純粋な格闘ゲームとして考えればあまりに穴が多く、また、オンライン対戦時のタイムラグの酷さから、とても快適に遊べるものではありません。しかし、原作者である荒木飛呂彦先生の絵を3Dにしたらこんな風に動くんじゃないかというイメージそのもののキャラクター、原作のカラーページの雰囲気そのままな背景、原作のカメラワークまで再現した必殺技、プレイアブルキャラクターはもちろん、ちょっとした台詞を言う為だけにイラストで登場するキャラクターまですべてボイス付き、遊んでみれば本当に作りこまれていることが分かります。スタッフロールで見れるゲームのキャラクターモデルを利用した原作再現ムービーは鳥肌モノです。
1万円以上もするスティックを買って、この技の硬直時間が何フレームで……なんてことを考えながら遊ぶ格闘ゲームファンには決してオススメしませんが、原作ファン同士が次々キャラクターをとっかえひっかえ、コントローラーでガチャガチャ遊ぶ限りは、こんなに素晴らしいソフトは中々お目にかかれません。他の漫画やアニメなどを原作としたキャラクターゲームと比較しても、むしろ良い方だと言えるぐらいです。
しかし、一度こんな風にファンの心理を利用するようなやり方に嫌気がさしてしまえば、悪い所もあるけど、良い所を見て楽しく遊ぶ、なんていう気持ちにはなれない人がたくさんいるのです。むしろ、嫌なところばかりが目についたりすらします。今回の記事ではすべてを網羅していませんが、インターネット上では非常にたくさんの問題点が、ユーザーによって列挙されています。
課金があるからいけない、ということでもありません。高騰する開発費の回収を考えれば、パッケージソフトだってダウンロードビジネスに取り組む必要があります。メーカーとユーザーが信頼関係で結ばれ、良い物を提供するからその分の対価が必要ということであれば、お金なんて惜しくないというファンはたくさんいるはずです。
むしろ、長期に渡ってしっかりとしたお客さんを掴むチャンスだったはずです。そのチャンスをみすみす逃したのです。ユーザーを怒らせ、ゲームの評価は価格と共に地に落ちました。パッケージはとにもかくにも売上が立ったと言えます。しかしダウンロードビジネスをしていくのであれば、ユーザーとの信頼関係が崩れ去ってしまったことは痛恨の極みでしょう。
この話は、ジョジョASBや、バンダイナムコゲームスだけではなく、ゲーム業界全体においても非常に重要な意味を持っています。ユーザーとの信頼関係を大切にし、気持よくお金を払ってもらうということをもっともっとよく考える必要があるように感じます。
ガイド追記 2013年9月21日、本文に誤りがありましたので修正しました。キャンペーンモードのエネルギーは15分1個ではなく、20分に1個回復となります。お詫びして訂正いたします。
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