保健師/保健師の就職事情

大学の保健師教育が選択制主流になった背景(2)

看護系大学では保健師教育選択制を採用するところが増えたことで、大学に入っても保健師の資格が取れないケースが出てきました。学校選びは慎重にしたいですね。

西内 義雄

執筆者:西内 義雄

保健師ガイド

選択制に変わりつつある理由

大学における保健師教育が、かつての統合カリキュラム(看護師と保健師両方の資格を取得することが卒業要件)から、希望者のみ保健師の資格を取得する選択制に変わりつつあること。その背景にどのような事情があるかは前回説明してきました。ここではその後の問題について私見も交えて解説していきます。

統合カリキュラムから選択制への移行には、文部科学省の「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会最終報告」(平成23年3月11日付)が影響しています。ただし、原文を読むと必ずしも選択制を強制しているわけでなく、

学士課程においては看護師等の基礎となる教育内容が確保されることを前提として、今後看護師教育のみを教育課程とするか、保健師教育を含めた教育課程とするか、あるいは希望する学生が保健師教育を選択できる教育課程とするかは、各大学が自信の教育理念・目標や社会のニーズに基づき、選択できるものとする。
その上で、大学専攻科における教育の実施、あるいは大学院において高度専門職業人の養成を目指した教育を実施することを等の方策を通じ、社会のニーズに応え得る保健師教育の充実を図ることが考慮されるべきである。


と書かれています。簡単に説明すると、今後の大学看護教育では
・看護師のみの教育
・看護師と保健師、両方の教育
・希望者のみ保健師教育
の3つに加え、
・大学院での高度な保健師教育
も加わることを考慮しましょうと記されているわけです。

教育の充実を図る根拠は?

なぜこのような提案をしているのか、根拠の部分を読むとこう書かれています。

これまで、保健師教育は学士課程で学ぶすべての学生が履修してきた。しかしながら、今日、健康危機管理や児童虐待の予防、自殺対策など複雑な健康課題が顕在化するなかで、こうした課題の予防・解決に一定の役割を果たしてきた家族機能や地域における人々のつながりが変化・縮小するなど、保健師活動を取り巻く環境は大きく変化している。さらに、保健所及び市町村の保健センターの業務や組織が再編され、保健師の分散配置が増えていることから、保健師には、保健福祉チームの中で自立的に働くことがこれまで以上に求められている。
これらを背景に、公衆衛生看護活動に焦点を当て、保健師に求められている役割に対応できる能力の基礎を身につけることを目的として、指定規則に定める教育内容の充実が図られた。


と、複雑な健康課題が増え、昔のように家族や地域で解決できなくなっている社会情勢と分散配置について触れています。*分散配置については「保健師の仕事内容(1)」を参照

保健師資格が取れないケースもある

保健師への道が遠くなった?

保健師への道が遠くなった?

そして、この最終報告を受け、多くの大学が選んだのが、希望者のみに保健師教育を行う「保健師選択制」でした。それも希望者全員を対象とせず、3年進級時に希望者を募ったうえで、20~30名の人数制限を設ける学校が多くなりました。つまり、大学で保健師の免許が取れることに変わりはないけれど、希望者が多く、選考に落ちれば資格取得の権利を得られない可能性もでてきたわけです。

これから大学に進み、保健師資格を取得したいと考えている方は、志望校がどのような教育理念を持っているのか、保健師についてどのような教育をしているのか。さらには、実習の充実度、期間などもじっくり検討していただき、悔いの残らない選択をしてほしいと思います。

今回の保健師選択制の流れが進む中、全国の保健師学校の数は次第に減ってきています。大学希望者が増えたことが理由ですが、保健師を目指すという意味ではとても充実した教育をしていること。とくに実習においては工夫を凝らし、現場のリアルな体験ができる学校が多く、卒業生たちの結束も強さも感じます。私が取材してきた若手保健師たちも、皆、一様に保健師学校は実習が充実していると答えていたのが印象的でした。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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