非課税は利益を確保することが大前提
NISA投資で注目のリスクコントロールETF
制度の内容には触れませんが、少々「非課税」という言葉が先走っている気がしてなりません。NISAにおいて非課税はだれもが利用できますが、必ずしも誰もが非課税の恩恵を受けられるわけではないことに注意しなければなりません。
まどろっこしい表現になってしまいましたが、要は利益を確保しない限りは非課税の恩恵を受けることができないということです。かつて「マル優制度」と呼ばれる「少額貯蓄非課税制度」がありました。マル優制度の対象商品は、預貯金や債券などの元本が保証されている金融商品です。元本が保証されている商品であることから、マル優制度を利用すればだれもが必ず非課税の恩恵を受けられたのです。
ところが、NISAの対象商品は株式、ETF(上場投信)、J-REIT(不動産投資信託)、株式投資信託など、元本が保証されていない金融商品ですね。利益を確保できることもあるし損失を被ることがある金融商品ばかり。このため、NISAを利用した投資家全員が、必ず非課税の恩恵を受けられるわけではないことになるのです。
簡単にいえば、NISAを利用して利益をあげた投資家だけが「非課税」という特典を受けられるのです。
初心者は預貯金より高収益を確保できればという感覚で
利益を確保しない限り非課税の恩恵を受けられないなどというと、投資初心者の人にはハードルが高くなってしまうかもしれません。しかし「預貯金や国債などより高収益になれば……」という心構えであれば、NISAを利用した投資デビューのハードルは低くなると思われます。理想をいえば、さらにリスクも抑えられていればなおうれしい、となるのでしょうか。そこで注目したいのがリスクコントロール型のETFです。リスクコントロール型のETFは、投資対象である株式を100%組み入れて運用されるのではなく、運用資金の一部を現金で保有することにより、株式を100%組み入れるETFよりも価格の変動を抑えているのです。
東京証券取引所に上場しているETFでリスクコントロール型は、MAXISトピックスリスクコントロール(10%)上場投信(1574)と、MAXISトピックスリスクコントロール(5%)上場投信(1567)の2銘柄です。
この2銘柄のETFは、トピックス(TOPIX=東証株価指数)の変動が激しいときには、株式への投資割合を下げ、現金の保有比率を高めます。反対に、TOPIXの価格変動が穏やかなときには、株式への投資割合を高めて現金の保有比率を下げることになります。リスクコントロールが行われている分、日々の価格の変動率はTOPIXよりも穏やかになります。また、その運用実績はTOPIXと比較して利益・損失の額が小さくなる傾向にあります。
投資のセオリーからいえば、そもそもリスクを取って運用するのだから、TOPIXなどの平均的な収益を下回る商品にわざわざ投資する必要はないはずです。しかし、先に述べたように、市場の平均的な収益ではなく、リスクを抑えたうえで預貯金や債券の収益をかなり上回れる可能性が高い商品であれば、投資初心者、あるいはリスクをあまり取れない投資家には一向の余地がある商品と思えてなりません。
長期国際分散投資も大切ですが、投資初心者には運用をまず始めてもらうという視点にたった商品選びをするのもありだと思えます。リスクコントロール型ETFの欠点は、売買高が少ないという点に尽きそうです。