リチウムイオン電池について
リチウムイオン電池は、繰り返し充電し、使用することのできる二次電池であり、小型で軽量であるため一般家庭用や携帯電話、電気自動車に使用されています。リチウムイオン電池は大きく分けて4つの特徴があり、それらについてお伝えしていきます。1.電圧が高い
まず、最初に挙げられる特徴が電圧の高さです。同じ小形二次電池であるニカド電池やニッケル水素電池と比較しても約3倍の電圧が得られます。言い換えると通常より少ない電池数で稼働することができ、車両の重さも大きく改善されます。
2.エネルギー密度が高い
リチウムイオン電池の重量エネルギー密度は155Wh/kgと他の二次電池と比較しても2~3倍の密度を誇ります。これにより、小型でもパワーのある電力供給を実現します。携帯電話などにリチウムイオン電池が使用される理由もここにあります。
3.メモリー効果がない
通常の二次電池は浅い充放電を繰り返すと電池容量が減少する「メモリー効果」というものがあります。よく電池は容量がなくなってから充電する方がよいと言う人がいますが、リチウムイオン電池は、使いたいときに使い、充電したいときに充電する継ぎ足し充電が可能となります。
4.サイクル寿命が長い
電池は充放電を繰り返すことよって次第に劣化していきますが、リチウムイオン電池については充放電を繰り返すサイクル特性が500回以上あります。品質や使い方次第で1000回以上の充放電も可能です。
代表的な3つのリチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、上記に挙げた特徴を踏まえつつ、さらに細かく分類するといくつかの種類が存在します。ここでは最近注目されているリン酸系、マンガン系、三元系の3種類についてお伝え致します。■リン酸系
リン酸鉄系(LiFePO4)は、BYD、天津力神などの、中国メーカーが多く採用する正極材料です。リン酸鉄系のメリットとしては、リン(P)と酸素(O)の結びつきが強く、電池内部で発熱があっても結晶構造が崩壊しにくく、安全性が高いのが一つと考えられます。
また安全性に加え、リン酸鉄系のもう1つのメリットに材料コストがあります。鉄の原材料価格はマンガンよりさらに安価で、マンガンの数分の一程度と見積もられます。一方でデメリットとしては、電気伝導性が低く、パワーが弱いことが挙げられます。
■マンガン系
マンガン系は螺旋構造となっており、リチウムイオンが出入りしても、その構造が維持されるため、安全性が高いといわれています。ただし、マンガン系は容量が少ないため、長距離移動が難しく近距離での使用に限定されてしまいます。そこで航続距離を伸ばすために注目されているのが三元系になります。
■三元系
三元系とは、コバルト、ニッケル、マンガンの三元素を正極に使用するもので、いわば良いとこ取りの電池ともいえるでしょう。三元系は、エネルギー密度が高く、安全性が高いと言われています。この三元系のリチウムイオン電池は、2015年から市場投入される見通しです。
現在ではパナソニックや、GSユアサとホンダの合弁会社であるブルーエナジーが積極的に生産に取り組んでおり、今後リチウムイオン電池の三元系が、電気自動車のバッテリーの主流にもなるでしょう。
さらに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はバッテリー性能の向上を目指すロードマップも策定し、本格普及に向けての土台も揃いつつあります。
(図)バッテリー性能
電気自動車のバッテリー性能が向上することによる主なメリットは、航続距離の延長と車両価格の低下です。
現状のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度は100~250Wh/kg程度です。鉛蓄電池の約30~40Wh/kgと比べて格段に向上していますが、まだ航続距離に関しては、ガソリン自動車との間には依然として差があります。
エネルギー損失率の差を加味しても、ガソリン車両と同等の航続距離になるためには500Wh/kg以上の重量エネルギー密度が必要になります。そのため電池の性能向上に向けて研究開発が進められている最中ですが、現行の性能でも日常生活で用いる車としては、多くの方々にとって十分な航続距離に至るまでになってきています。
また現状では電気自動車の車両価格はガソリン車と比較して高価であるために、消費者が電気自動車の購入をためらう要因の一つとなっているのも事実です。この価格を下げることも普及に向けての重要な要素となります。