VCUについて

皆さんの中には電気自動車と聞いて、「本当に安全?」と感じている人もいるかもしれません。例えば、電気自動車が交通事故にあった時に感電について心配したり、原因不明で車が急に止まってしまったり、電池が発火してしまったりといったような問題が頭に浮かぶのではないでしょうか。

私は、これまで15年間、電気自動車の開発に関わってきました。そして、電気自動車を安全に走らせる上で最も重要となる、モーター、バッテリー等それぞれのコンポーネントをうまくコントロールする装置であるVCU(ビークル・コントロール・ユニット)が必要であることを10年前に知りました。

その後、VCU開発にはとてつもない時間と開発費を費やしてきました。今回はその電気自動車の脳と言われるVCUについてご説明させていただきたいと思います。

(図)VCUundefinedBEET Philippine HPより

(図)VCU BEET Philippine HPより

VCUとは、走行中に常に変化する車両の状態を判断し、最適な状態を維持するために各コンポーネントを制御する装置です。モーター、インバータ、電池、エアコンなどの相互に影響しあう各コンポーネントを、単独ではなく他のコンポーネントへの影響を加味し、CAN通信によって全体を制御します。想定される誤動作・事故対応を事前に組み込むことで、より安全・安心な車両を実現するのです。VCUを搭載することにより、具体的にどのようなメリットが生じるのでしょうか? 実際に得られるメリットを紹介していきます。

VCUを搭載するメリット

■車両の安全性を確保・高寿命化
今お伝えした通り、VCUは電気自動車をより安全な車にしてくれます。VCUの制御機能によって、過酷な走行によるモーターへの過電流を防止したりするなどして、車両への負担を軽減してくれます。他にもモーター、バッテリー等が故障した際に異常を検知してお知らせしてくれたり、バッテリー充放電において過充電やセルへの負担を軽減するなど、VCUのソフトウェア制御により、車両の安全性と寿命を格段に向上させることができます。

■ITとクルマの融合
車両に通信機能やGPS機能等を取り付け、走行記録や運航状況を基にサービスを提供する技術を、テレマティクス技術と言います。VCUを搭載した車両は、テレマティクス技術と融合し、車両運行情報(運転時間、異常情報、電池状況など)を技術センター、リース会社、ディーラー、などに送信し、その情報を蓄積・管理することもできるのです。

そしてVCUとGPSと連動させることで、あらゆる情報や電力をつなげるスマートグリッドとの連携が可能となり、その車が走るエリア情報とリンクさせることで、様々なサービスが提供できるようになるため、サービス提供を行うという観点で技術開発が進んでいきます。

また、車両が盗難にあった際はGPSによる現在位置の検出だけでなく、VCUによる遠隔アクセル開度制御をすることが可能であり、車両の速度制御や停止させることができるのです。このようにITと融合することで、より多くのVCUによる制御が可能となるのです。

■車両情報管理の高度化
電気自動車が普及に至る前の段階である今、開発者側は少しでも多くの車両情報を得て製品にフィードバックしたいと考えています。このデータの蓄積技術は、一年や二年前に始めた電気自動車ベンチャーや電動バイクベンチャー企業では蓄積された情報が少ないことから対応ができるレベルではありません。

長年開発を行ってきたトリトンEVテクノロジー社や米国テスラモータースなどは、こつこつと情報を集め、すべてのデータを車両に搭載したVCUから、必要な情報を項目別に取出し、走行の運行管理を行っているのです。例えば、開発側が欲しがっているバッテリー情報、モーター情報、充電情報などを瞬時に特定部門にテレマティック機能を使い送信することが可能です。

またリース会社などでは顧客サービスの一環として電力消費量、発信停止情報、稼働時間、行動分析を行い、リース会社と契約している企業が求めている情報や、営業に使用できる情報を送信することも可能です。

また緊急時、すべてメモリーが交通事故または何かしらの原因で、万が一動かなくなった時のために、車両診断と故障・事故原因の解析や分析を行うダイアグノーシスと呼ばれる自己診断機能を備えています。

VCUができること

これらのメリットによって電気自動車は常に安心で安全、かつ省バッテリー消費に優れた走行が可能となり、運行者・運行管理者・アフターサービス会社・車両開発会社に対し様々な情報を集めることができ、その情報を元に、利用者がより便利になるサービスを提供できるようになるのです。

上記点に加えて、VCUは各コンポーネントを1ストップで高度に統合制御するキー・コンポーネントとして、将来的に多機能化が求められる電気自動車の付加価値向上に貢献できると考えられています。これは、ソフトウェアの制御により、車両の省エネルギー性能化、快適性能化、娯楽性能化の向上や、データの蓄積により効率の計算が可能で、各コンポーネントの小型化・低スペック化を実現し、コンポーネント全体での効率化とコスト削減することがVCUによって実現可能になるということです。

また、社会に求められる車両としての安全性と機能性(汎用性、拡張性)のあるキー・コンポーネントとしても、VCUは開発におけるコスト削減、安全性と機能性を達成した制御技術の実現に以下の点で貢献すると考えられます。
  • 市場が求める電気自動車としての商品企画・開発やコンポーネント選定の幅の拡大
  • 想定される故障、誤動作、経年劣化を制御対象とし、ユーザーのリスクを軽減して安全を担保
加えて各国の電気自動車を運行する交通法規や規制にソフトウェアにて対応が可能で、自動車メーカーは短期間に異なる仕様の電気自動車を低コストで市場投入することが可能となります。

さらに、VCUは機械技術とIT技術を融合するキー・コンポーネントとして、ドライバーの行動特性や目的、イメージに合わせた最適な開発をサポートし、IT技術との融合を達成した制御技術の実現に貢献します。そしてこれによって、車両の商品企画や開発(主にユーザーのスタイルを考慮した車両作り)の幅がさらに拡大するのです。

そしてVCUが最も注目される理由は、スマートグリッドと電気自動車とを繋ぐ接続キー・コンポーネントとして、技術成長に合わせてバージョンアップする基幹的な役割を担うことで、最適かつ円滑なスマートシティー及びスマートコミュニティーの構築、運用に貢献できるという点にあります。

これにより、電気自動車と社会が一体となり、社会のための電気自動車の交通文化を創出することが可能になります。将来が期待される電気自動車の市場においてVCU技術を活用した車両作りを行い、広がりある各国の交通システムとの融合を図る高度な車両が提供できるのです。

VCUの5つの機能

最後に、上記に述べた情報を含めたVCUの機能についてシンプルにわかりやすく理解していただくため、その機能を大きく分けて5つに分類し、お伝えいたします。

1.車両制御
VCUの車両を止める技術を駆使し、安全な走行をドライバーに提供します。例を挙げると、回生制御及びMブレーキによる減速制御や上り坂での加速制御を可能とします。

2.システム制御
車両のコンポーネントの起動や停止に使われる起動・終了制御や充電システムの制御、さらにBMS(バッテリーマネージメントシステム)やMCU(モーターコントロールユニット)や急速充電器との通信を可能とします。

3.診断機能
VCU及び車載コンポーネントの状態を自己診断し、車両診断によってメンテナンス性を高めるダイアグノーシス機能の実現を可能とします。

4.メーターパネル制御
速度や電池残量などのパネル表示異常や故障状態に陥った場合、各メーター情報と連動させ、ドライバーが求めている情報を知らせることができます。

5.情報収集機能
車両走行情報、故障情報の収集と蓄積が行われ、通信機器を利用してそれら情報をネットワーク通信によって送ることができます。

上記ではごく一例ですが、ここに挙げた全ての機能が、VCUという装置に組み込まれています。私は、VCUとは電気自動車の脳であり、車両だけでなく車を取り巻くインフラやサービス等、新たな業界や参入企業の方々と、新しい市場を創造するためのキーユニットであると信じています。これから、飛躍的に拡大していく世界各国におけるスマートグリッド市場においてVCUが果たす役割には、大いに期待できることと思っています。
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