三代続く“やきとん”の名店「鳥茂」
カウンターの最大の魅力はなんといっても大将との会話、コミュニケーションです。だから当然、大将との相性の問題も発生するし、こちら側の客としての力量も求められるのがカウンターではないでしょうか。自分のお気に入りのカウンターのお店に誰かをお連れするときは、その相手とお店との相性も考えることになるし、どのカウンター(お店)にお連れするのが一番楽しい時間が過ごせそうかも想像したりします。そして、その引き出しをどれだけ持っているかというのは、もしかしたらその人の生きてきた人生の豊かさとも繋がるんじゃないか、なんて、ちょっと大げさのようだけど、そんな風にも感じるのです。レバー
グルメの不毛地帯とも言われ、毎日深夜まで大勢の人が行き交う新宿に昭和24年創業の「鳥茂」はあります。店名に鳥という文字がありますが、焼鳥ではなく“やきとん”です。創業当時、食料難だったこともあり、豚を扱うやきとんの店でもこのように“鳥”という文字が使われたそうで、同店もその名残となります。現在の大将は三代目。
2011年に目と鼻の先の近隣から移転したばかりなので、とても立派な店構えと店内。やきとんと聞いて想像するようなものとはまったく異なりますが、スタッフの方は皆生き生きとして活気に溢れています。広い店内は大半がテーブル席になりますが個室もあり、1階、2階ともにカウンター席があります。そして、2階のカウンター席を取り仕切るのが大将の酒巻氏。店内は毎日のように満席で、カウンター席はなかなか常連しか陣取れませんが、このカウンターで食べてこそ、「鳥茂」を最大限に楽しめます。
同店発祥、ピーマンの肉詰め
必食メニューはこれ!
同店でおススメ、必食の料理は沢山あります。まずは“レバー”。歩留まりの悪さなんて関係なし! といった様子のきれいに切りそろえられたレバーだから火の入り方も均一で、まさに職人技。豚の腸である“しろ”は、臭みをまったく感じさせず、脂ののりもよくて身のしっかりとしたもの。甘辛いタレとの相性もよい一品です。脂ののった部位が好きな方であれば、直腸もいいでしょう。そして同店が発祥の“ピーマンの肉詰め”もやはり外せない一品。一日20匹分前後しか入らない希少な豚のタンの根元は一人一匹分、贅沢にコロンとした塊にかぶりつけば、むっちりとした食感が楽しめ、適度な脂ののりとで牛タン以上の美味しさかもしれません。
そして、私の好物でもある“子袋刺し”。刺しといっても一度ボイルされています。実は子袋は、結構臭いがきつい部位なのですが、同店ほど臭みのないお店はなかなかなく、素晴らしいの一言。これは必ず全て臭いを確認し、臭うものは捨ててしまうそう。どの部位も下ごしらえの丁寧さの賜物だと感じます。毎日5kg仕込むという自家製のらっきょうや、大根、きゅうりの漬物、ナスの炭火焼き、長芋とオクラ、茗荷、卵のねばねば系の箸休め、口直しの一品はどれも気が利いています。そして〆の定番はそうめん。すっぽん、鶏の出汁に白味噌が入ったスープは最後に来てもなお食が進みます。
しろ
豚のタンのつけ根
豚刺し盛り合わせ
〆のそうめん
大将の目の前に座り上を見上げると鏡があり、やきとんが丁寧に焼かれる様子を見ることができるという、ニクイ配慮も。情熱と真摯さをもって毎日焼き続けている大将らしいアイディアだなぁとも思います。モツが苦手な人にこそ試してほしい。大切な人を、自信を持って誘える一店です。
同店で特に美味しい体験をした思い出の部位:レバー、しろ、子袋、タンの付け根
■鳥茂
・住所:東京都渋谷区代々木2-6-5
・TEL:03-3379-5188
・営業時間:
月~土:17:00~25:00
・定休日:日曜日
・地図:Yahoo!地図情報