クローズ販売を成功させた立地の磁力
ごく稀にではあるが、「いつの間にか売れていた」というプロジェクトがある。一般的にマンションの建設地には建築を知らせる看板が掲げられ、工事が始まる前には敷地の周りに囲いが設けられる。この段階でそのマンションに関する情報を得られるのは、近隣に住み、かつマンション情報に興味を持っている住人、もしくは事情通の業界関係者ぐらいしかいない。そして最小限の情報が載ったホームページが開設される。ホームページが開設されたとはいっても、告知(宣伝)を行わなければそうやすやすとたどり着くことは難しい。これでは「売れるはずがない」と思うのだが、何故か売れる。「プレミスト南青山」は今年の春、このような一切オープンの販売活動を行わなかったプロジェクトなのだが、モデルルーム開設後2ヶ月足らずで全84戸中7割超が販売済みとなっている。では何故そうなった(売れている)のか。その答えは、立地の“引き”である。近隣住人は「南青山」では新規の分譲マンションがめったに出てこないのを知っている。事実担当者の話では、この20年間で東京メトロ「表参道」駅から徒歩10分以内で「南青山」のマンションは5件しか発売されていないとのこと。1990年代後半から2000年前半、首都圏で8万戸・9万戸という大量供給が行われていた時代も含まれているにもかかわらずだ。だからこそクローズされた販売活動でも人気を博しているのだ。
あらためて立地条件を確認してみよう。アドレスは「南青山6丁目」で、東京メトロ「表参道」駅から原宿方向を背にして徒歩6分、根津美術館の斜め向かいだ。様々な分野の著名なブランドショップやレストラン・カフェが建ち並ぶ目抜き通りから少し入り、華やかな表参道界隈が間近とは思えないような邸宅街の一画を占める場所。そこが「南青山」でなくても食指が動くような環境だが、マンション分譲自体が稀少な「南青山」であり、しかも3700m2を超えるゆったりとした敷地。情報を知り得た数少ない反響者が、高い歩留りで契約に至ったことは当然の結果と言えるかもしれない。
マーケットにオープンとなった背景
しかし、それほどまでに“引き”のある立地条件ならば、大々的に宣伝活動を行えばもっと簡単に売れるのではないか、そしてその方が手間もかからないのでは、との疑問もわいてくる。しかしそれは早計というものだ。平均坪単価約550万円、1億を超える住戸が大半を占めるプロジェクトに多数の希望者が殺到したらどうなるか。販売活動に混乱をきたした可能性も否定できず、何よりも告知せずとも問い合わせをしてくれた近隣を中心とする熱心な希望者に配慮したであろうことは想像に難くない。やはりそのマンションに住みたいと熱を入れてくれた人に売りたいというのが人情というものだろう。とはいえ、冒頭に記した通り「いつの間にか売れていた」で許されるのか。非常に高額なマンションであるにもかかわらず、これだけニーズの高いプロジェクトなのだから、やはり世に知らしめるべきではないか。今回、多くのユーザーに向けて「プレミスト南青山」の情報を提供すべくこの稿を記しているのは、売主である大和ハウス工業のこうした姿勢から実現した。当初のクローズでの販売活動から、情報をオープンにした経緯をプロジェクト責任者である金城智杓氏が明かしてくれた。未発売の住戸は決して多くないが、立地の稀少性によって非常に高い評価を得ているプロジェクトを検討する機会ができたことは喜ばしいことと言える。
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