女の子みたいな男の子の名前はめずらしくない
女みたいな名前も今では普通に
Q:最近「みずき」「ちあき」「あおい」など、本来女の子の名前だったものを男の子につけるのが流行っているようです。流行なので仕方ないかと思うのですが、「最近男の子に多いから、間違えられやすい」という理由で、そのような名前を女の子にまでつけられなくなることに違和感を覚えます。一部の男の子達のために、女の子の名づけまで制限されるというのに、どうお考えですか?
A:本当におっしゃる通りです。そのほかにも「はる」「しおん」「ひなた」「まひろ」といった名前も、10年ほど前は女の子にしかつけられなかった名前ですが、最近ではかなり男の子につけられています。女性の名前をつけられた男の子たちももちろんですが、もとからその名前をつけられていた女の子たちも、男女間違えるような名前を一生使っていかなければならず、情緒面での影響も心配されますし、社会的に大きな不利益を蒙ります。しかし一部の人達の仕業にせよ、男女紛らわしい名前にされてしまった以上は、そういう名前はマネしないほうがいいわけで、これは仕方がないことです。
女の子みたいな男の子の名前が増えた背景……男女さかさまの名前
男女さかさまの名前というのは、名づけの本やサイトでもたくさん見られ、それを見てうっかりつけてしまうことももちろんあります。しかし名前の専門家が正しい名づけの本を書いたとしても、あとで男女紛らわしい名前が増えてくれば、本の内容が実状と合わなくなり、それらを削除して修正をくり返さざるを得なくなります。皮肉なことにまじめな本を作ろうとする著者、出版社ほどそういう被害を受けてしまうのです。ところで最近増えている男女さかさまの名前というのは、9割以上が男の子につけられています。単なる間違いからであるならば、女の子にももっとあっていいはずなのですが、ほとんどありません。これは明らかに、女の子が生まれることを期待している人が増えている、ということにほかなりません。女の子の名前だと意識しながら男の子につける、というケースが多いのです。
日本の社会は両極端
昔の日本では家制度が重んじられ、家の中心に父親がいて、家の跡取りの男の子が生まれることがめでたいことであり、女の子ばかり生まれると母親として肩身がせまくなる、といった極端な雰囲気がありました。子の名前はほとんどの場合父親がつけ、期待に反して女の子が生まれた時は、腹立ち紛れに男のような名前や、男女ともにある名前をつけることもよくありました。今は昔とまったく逆の社会で、多くの家庭は母親を中心にまわっており、父親の存在感が薄くなっています。社会全体も、昔の「男性が評価される社会」から、「女性が注目される社会」へと逆転しています。出産をむかえる母親も、女の子なら気持ちが通じるし、服を着せる楽しみがある、と女の子を育てることを楽しみにしている人が多くなっているようで、期待に反して男の子が生まれてしまった場合、せめて名前くらいは、と女の子の名前をつけたくなるのです。
ただそれは正直といえば正直ですが、男の子が生まれたことを親が納得せず、受け入れない、ということであり、そういう不満の気持ちを名前にぶつけた形にはなります。昔、女の子に男のような名前をつけた親も「べつに女の子がイヤだったわけじゃない」と口では言っていました。しかし本人が情緒面でどんな影響を受けるかは予想のできないことです。最近では「女の子がほしかった」とはっきりおっしゃる母親までいますが、こういうことが今後の親子関係に良くない影響を与えることはないか、という心配もあるのです。
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