インテリアは“まんまビーエム”
市販モデルの詳細発表はフランクフルトショーにて、ということだったので、撮影用車両のインテリアにもクロスの覆いが掛けられていたが、テストドライブに供された車両では、そのデザインをしっかり確認することができた。これがまた、拍子抜けするほど、“まんまビーエム”であった。デザイン的には、6シリーズやZ4のテイストとよく似ている。メーター回りのディテールこそ違えども、ステアリングホイールやシフトノブといった操作系は、ほとんど同じ方向性で、落胆寸前。
個人的には、インテリアにももう少し“挑戦”や“未来感”もしくは“昂揚感”や“イロ気ツヤ気”があってもいいと思う。もっとも、デザイナーとエンジニアにしてみれば、(他の既存BMWラインナップがそうであるように)その時代時代においてベストな運転環境を目指す“ドライビングマシン”カンパニーのクルマだ、という自負があるのだろう。
同じエンブレムを付ける以上、そしてそのクルマが後輪を駆動する以上、システムやテイストがまったく違うコクピットを採用する合理的な理由を見つけられなかった、のかもしれない。そう考えると、i8を皮切りにBMW次世代のコクピットデザインを見せてくれても良かった、とも思うのだが……。
ちなみに、リアシートは完全に荷物置場レベル。足元こそスペースがあるものの、頭上はとても狭い。身長170cmの筆者ではずっと首を曲げていなければならなかった。育ち盛りの子供でも、じゅうぶんに嫌がる狭さである。
少し高めのサイドシル(スーパーカー流だ)を乗り越えて、オシリからストンとドライバーズシートに滑りこんだ。軽く背を伸ばせばドアのインナーノブに手が届く。軽いから、閉めるのもラク。パシッと密閉され、背筋が伸びた。
スターターボタンを押す。爽やかなチャイムが鳴った。いよいよ、新時代のスポーツカーを試すときがやってきたのだ。