糖尿病とがんを予防する食事は、魚、野菜、果物、全粒穀物を中心に。オリーブオイルを愛用すればまさにヘルシーな地中海型ダイエット!
しかし、糖尿病と言ってもいろいろなタイプの糖尿病がありますし、がんにもいろいろあります。皆、同じ条件でしょうか? 全く別の病気だと思っていた糖尿病とがんのどこに接点があるのでしょうか? 予防する方法はありますか? それでも、いざ併発したらがん治療と糖尿病治療の折り合いをどうつけますか? これらの難問の数々が少しずつ明らかになってきました。
糖尿病があるとリスク2倍! 肝臓がん、膵臓がん、子宮内膜がん
米国では糖尿病とがんが増え続けています。毎年160万人が糖尿病になり、140万人ががんになっています。糖尿病とがんを併せ持つ人も増えています。そこで2010年に米国糖尿病学会と米国がん学会が共同で糖尿病とがんの関連をまとめた合意レポートを発表しました。それによると糖尿病、主に2型糖尿病があると、肝臓、膵臓、子宮内膜のがんリスクが2倍に、大腸、直腸、乳、膀胱(ぼうこう)のがんリスクが1.5倍、他のがんは関連を示す十分なエビデンスがない、あるいは関連がないとされました。唯一の例外は前立腺がんで、糖尿病があると相対リスクが低くなったのです。たぶん、これは糖尿病があると男性ホルモンのテストステロンのレベルが下がるためではないか、と考えられています。
日本でも今年2013年5月に日本糖尿病学会と日本癌(がん)学会による共同調査研究の発表がありました。それによると2型糖尿病の人はそうでない人と比べて、肝臓がんの発症リスクが米国と同様に約2倍高くなることが分かりました。膵臓がんは約1.9倍、大腸がんは約1.4倍、子宮内膜がんは1.84倍です。やはり、2型糖尿病はインスリンを分泌する膵臓と、そのインスリンの全量が直接流入して、インスリンの2分の1を使ってしまう肝臓にがんのリスクが高いのです。ここに問題のヒントがありそうです。また、日本では全がんリスクが2型糖尿病になると男女共に1.2倍になりました。やはり糖尿病とがんは関連があるのです。
糖尿病とがんの関連は2型糖尿病だけ?
糖尿病とがんの研究はほとんどが2型糖尿病を対象としています。2型糖尿病とがんのエビデンスは上記のように明らかなのですが、1型糖尿病はそもそもがん研究の対象にもなっていないようです。1型糖尿病の患者数は特に少ない上に若年発症例が多く、中高年のがん年齢に達する以前の糖尿病合併症の予防の方が大問題です。糖尿病とがんの関連はインスリン抵抗性に基づく内因性の高インスリン血症が問題の核心ですから、内因性インスリンが絶対的に欠乏している1型糖尿病とは基本的にかかわりがないのでしょう。ところで、多くの大規模研究にもかかわらず、2型糖尿病ががんの直接的な原因になるという決定的な証明はできませんでした。では、肥満が糖尿病とがんの原因になるかというと、たしかに肥満者はこの糖尿病とがんの2つのコンディションを併せ持つことが多いのですが、その因果関係ははっきりしません。
肥満と2型糖尿病の関連は明らかですから、減量は2型糖尿病のリスクを減らします。しかし、減量ががんのリスクを減らすかというと、どうもその辺りがよく分からないのです。