<目次>
どういたしましてのイタリア語「prego プレーゴ」の意味
日常でも使う「どういたしまして」はイタリア語で何という?
イタリア語で「ありがとう」は「grazie グラッツィエ」でしたね。それに応じるための定番中の定番の表現といえば、「prego プレーゴ」。これは、使える場面が幅広い、とても便利な表現です。「どういたしまして」という意味のほかにも、家へ招いたお客さんに玄関口で「さあどうぞお入りください」と促すとき、家のなかで椅子をすすめて「どうぞおかけください」と言うときにも使えます。使われる場面での共通項を拾っていけば、「どうぞ、どうぞ」「そうしてくださったら何よりです」、あたりが中心的なニュアンスと言えるでしょう。
発音のポイント/ないはずの母音を入れずに「pr」を発音
イタリア語は「ほぼローマ字読み」で発音できるから楽なはずなのですが、ところどころ難所があります。その一つが、「prego」の「pr」を言うときのように、「母音が入っていないところに母音を差し挟まずに発音する」ことです。日本語を母語とする私たちは、「prego」と発音しているつもりでも、「purego」のように母音を入れて言いがちです。それを避ける練習として、こういうのはどうでしょうか。シチリア州都パレルモの路上で雨に打たれる、金魚ならぬイルカ。空気が抜けすぎていてさびしい。
まず、「あなたは金魚鉢のなかにいる金魚」であると仮定して、無心に水面近くを泳いでいるつもりで、ひたすら口を「ぱくぱく」します。これは、口の筋肉を動かす準備運動。次に、あなたは「なぜかおなかがいっぱいで、水面に浮かんでいる、投げ入れられたエサがじゃまくさい」とします。そこでエサを口から吐き出すシャープな呼気でよけます。「プップップップップ」。このとき、「pu」のように母音uを入れると吐き出す息の勢いが弱く、uを付けずに「p」だけ言うと勢いが増します(口の前に手を当てれば、勢いの違いがよくわかります)。その勢いにのったまま、軽い巻き舌で「re」と続けると、イタリア語らしい「prego」になる……はず。
とはいえ、ないはずの母音が少々入ろうが、「ありがとう」「どういたしまして」という言葉のやりとりでは必ず伝わるはずですから、あまり気にしなくても大丈夫です。
イタリア語「どういたしまして」のバリエーション
「ありがとう」と言われたとき、「いえいえ、そんな、お礼を言われるようなことは何も……」と返したい気分のときは、「di niente ディ・ニエンテ」や、「non c'è di che ノン・チェ・ディ・ケ」という表現が使えます。「di niente」は「何も」、「non c'è di che」は「感謝されるべきことは何もない」というような意味です。「どういたしまして」の一歩先を行く、「こちらこそ」
ホームパーティーの準備で、友人が食器のセッティングを手伝ってくれているとします。テーブルに並べてね、というつもりで紙皿の束を手渡すと、友人は紙皿を受け取りながら、「ありがとう」とお礼を言ってくれました。こんなとき、「いやいや、ありがたいのは手伝ってもらっているこちらの方であって……」という気持ちを込めて、「grazie a te グラッツィエ・ア・テ」と言います。「あなたにありがとう」「あなたにこそありがとう」、つまり「こちらこそ」という言い方です。もしも相手が敬語を使う対象だったら「grazie a lei グラッツィエ・ア・レイ」、相手が複数だったら「grazie a voi グラッツィエ・ア・ヴォイ」と言います。この表現は、「grazie」を省略して、「a te」「a lei」「a voi」と言うこともできます。ありがとう。 Grazie.
こちらこそ。 A te.
といった具合です。
お菓子屋さんで「ありがとう」「こちらこそ」
さて、イタリアのお店では、支払い後に商品を受け取るとき、客の側から店のスタッフに「ありがとう」と声をかけることがよくあります(もちろん逆もあり)。そのとき、店員さんは、「お客様のほうにこそお礼を申し上げます」という意味を込めて「grazie a lei」または「a lei」と返します。が、こちらがまだ「ありがとう」と言わないうちに「a lei」と声をかけられることが時々あります。つまり、「こちらこそ」のフライング……。お店のスタッフとしては、商品を渡したら「ありがとう」と感謝されることが多いので、その言葉を聞かずともお礼を言われたような気がしているのかもしれません。「マイペースさ」の現れなのでしょうか。
【関連記事】