ドラマとしての完成度が傑出した金田一シリーズの名作
「悪魔の手毬唄」

概要

四方を山に囲まれた岡山県鬼首村(おにこべむら)。20年前の未解決殺人事件を追う県警の磯川警部が金田一耕助に調査を依頼する中、陰惨な連続殺人事件が新たに起こり……。

原作者の横溝正史氏と縁があり、また作品としての評価が高い「岡山もの」の1作。

おすすめの理由

70年代の邦画ホラー作品を語る上で外せないのは、横溝正史氏原作の推理小説を映画化した所謂「横溝正史映画」です。

古い因習が残る田舎の没落する名家を舞台に、複雑な人間関係の中おどろおどろしい殺人事件が次々と起き、それを名探偵・金田一耕助が解決するシリーズです。映画としては9作品がこの時期に制作されました。

本作はこの時期3作目(市川作品では2作目)でシリーズ中最高傑作の呼び声が高い作品です。

魅力に挙げられるのは、まず市川監督、石坂さん、岸さんのゴールデントリオに加え、脇を固める名優陣の配役(若山富三郎さん等)がずばり適中したことで、演技に酔えるすばらしいシーンが多いという点です。

次に市川作品としての完成度の高さです。

市川監督は独特の映像感覚・センス・演出(ライティング、細かいカット割り、コンタッチ)と映像美で有名な方で、その映像に対する職人的こだわりは後の監督達に多大な影響を与えました。(『エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督、『リリイ・シュシュのすべて』の岩井俊二監督等多数)

本作はシリーズ他作品と比較し、とりわけドラマとしての出来が出色で、後半以降優れた文芸作品の味わいがあります。

そこに数々の傑出した文芸ものを手がけてきた市川監督の手腕が冴え渡り、ホラー的・謎解き的展開部には実験的・シュールな映像表現を効果的に多用し、ドラマ的展開部には重厚な演出で緩急織り交ぜ観客を作品世界に引き込みます。

また優れた作品によく見られる上質のユーモアが本作も随所に表れ、陰惨な場面を上手く転換したり、美しくも哀しい物語に救いを与える点を推す声も多いです。

その他本作を含めこのシリーズは昭和初期の地方をイメージした風景、家屋、名家の様子を興味深く再現しており、情緒、趣に溢れています。

また懐かしさや穏やかな優しさがあって、私が特にこの70年代シリーズが好きな理由の一つです。


■悪魔の手毬唄
・監督:市川 昆
・主演:石坂浩二、岸惠子
・DVD発売:有
・販売元:東宝



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