学歴コンプレックスが一つのテーマの作品
■作品名男はつらいよ 葛飾立志篇
■監督
山田洋次
■主演
渥美清、樫山文枝、倍賞千恵子、前田吟
■DVD発売元
松竹ホームビデオ
映画「男はつらいよ」シリーズ、第16弾「男はつらいよ 葛飾立志篇」は寅次郎が勉学に励むというユニークな内容となっています。おすすめの理由は、考古学の研究で下宿していた礼子に一目惚れする寅さん、メガネをかけて勉学に勤しむ寅さんなどです。
考古学の研究で下宿していた礼子に一目惚れする寅さん
今作はいつものシリーズと違い、勉強なんかにまったく無縁の寅さんが勉強するという作品です。きっかけはある住職から勉学の大切さを教わったこと、いつものようにマドンナに惚れたことですが、今回のマドンナは考古学を研究する礼子(樫山文枝)さん。彼女は勉強できますが、明るくて元気で誰とでも話をする優しい女性でした。そんな礼子さんに惚れた寅さんは、勉強の方も彼女に教えてもらいながら真面目に続けていきます。
あるとき、礼子は寅さんにプロポーズされたことを打ち明けます。相手が誰かも知らずにショックを受ける寅さん。どうせ頭の良い男性と思い込み、自分じゃかなわないと自ら思い込んで引いてしまいます。
ですが、大事な告白を打ち明けるぐらいですから、寅さんのことが礼子は好きだったわけです。いつものお約束ではありますが、寅さんは女心をわかってあげてほしいところです。
メガネをかけて勉学に勤しむ寅さん
寅さんは学のない人間ですが、1970年代は日本の高度経済成長期の頃です。学がなくても、働き口に困ることはほとんどない時代でありました。それゆえに、学がないことに悩む日本人も多かったのではないか。今のように大学の進学が当たり前ではなく、中学を卒業して就職がほとんどだった時代です。寅さんも学のない日本人として、それでは駄目だとメガネをかけて勉学に勤しみます。学歴コンプレックスというものをこの作品は一つのテーマとしています。それが最後の失恋の理由にもなります。頭が悪い人間だから、頭の良い女性には見向きもされない。あまりにも不器用ですが、これが多くの日本人から共感を得たわけです。