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三島由紀夫が描いた少年の残酷さ「午後の曳航」

未亡人アンは、13歳の息子ジョナサンとイギリスの小さな港町で暮らしていた。息子ジョナサンは学校の仲間と秘密クラブを作り、”首領”と呼ばれている少年の大人を憎んでいく世界観に感化され始めていた……。三島由紀夫の長編小説で、1963年に刊行された「午後の曳航」を基に、小説の舞台である横浜をイギリスの港町に変えて映画化。内容そのものは原作に忠実に描かれています。

投稿記事

理想の世界と堕落した大人との間で揺れ動く思春期の少年

■作品名
午後の曳航(原題:THE SAILOR WHO FELL FROM GRACE WITH THE SEA)
1976年イギリス=日本
■監督
ルイス・ジョン・カリーノ
■主演
サラ・マイルズ、クリス・クリストファーソン
■DVD発売元
オルスタックピクチャーズ


■あらすじ
亡き夫の後を継いで古物商を営む未亡人アンは、13歳の息子ジョナサンとイギリスの小さな港町で暮らしていた。
息子ジョナサンは学校の仲間と秘密クラブを作り、”首領”と呼ばれている少年の大人を憎んでいく世界観に感化され始めていた。

■おすすめの理由
三島由紀夫の長編小説で、1963年に刊行された「午後の曳航」を基に、小説の舞台である横浜をイギリスの港町に変えて映画化。
内容そのものは原作に忠実に描かれています。

司馬遼太郎が「最高傑作」と評した、この三島由紀夫の小説の世界観。
その世界観を十分に理解し得ないと、少年の複雑、繊細、残虐という内面を表現できなったでしょう。
映画では、ジョナサンの心理的な面を主観的にではなく、客観的に描いているのですが、だからこそ「何を考えているのかわからない」という少年が際立っています。

純粋過ぎる故に屈折した残酷姓。
三島由紀夫が描き出した少年の内面を、映画として表現できる限界にまで挑んだ印象さえ感じさせます。
正面から原作に向き合ったという、丁寧さも演出の端々からも伺えます。

思春期の少年に芽生える性的なことや、理想の世界と堕落した大人との間で揺れ動き、憤っていく様の演出も見事です。
母親の恋愛を中心に展開させつつ、それと対比させるかのように少年の冷ややかな眼差し。

もし三島由紀夫が存命して、この作品を見たらどんな評価だったのかな?なんてことも、思ったりしました。


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