戦争への不安も描いた明るくはない青春像
■作品名『おもいでの夏』(71)
■監督
ロバート・マリガン
■主演
ゲーリー・グライムズ、ジェニファー・オニール
■DVD発売元
ワーナー・ホーム・ビデオ
原題は「Summer of '42」。
1942年の夏、米ニュー・イングランドの島にバカンスにやってきた15歳の少年が、2人の親友を得、年上の女性に憧れる様子をリリカルに綴った一編です。
主人公ハーミーをゲーリー・グライムズ、彼が憧れるドロシーをジェニファー・オニールが魅力的に演じています。
年上の女性との初体験ものは数多く作られていますが、この映画のユニークな点は、42年当時17歳だったマリガン監督が、ハーミーを通して自身の少年時代を懐かしみながら、その奥に戦争の影を忍ばせている点です。
ラジオは戦況を伝え、ラスト近くではドロシーのもとに夫の戦死を告げる手紙が届きます。
一見、能天気に見えるハーミーたちも心の奥では戦争に対する不安を抱いているのです。
この決して明るくはない青春像を、アカデミー賞を受賞したミシェル・ルグラン作曲の甘美なメロディーと特殊なフィルターを使って撮影したブルース・サーティーズのカメラワークが救います。
ラストシーン、ドロシーからの別れの手紙を読むハーミー。
そしてルグランの音楽に乗せて成長したハーミーが語る「42年の夏、僕たちは沿岸警備隊の詰所を4度も襲った。5本も映画を見た。9日も雨に降り込められた。ベンジーは時計を壊し、オシーはハモニカを捨てた。そして僕は15歳のハーミーを永遠に失ってしまった」というナレーションはマリガン監督が担当しています。
ここはセンチメンタルな男の泣きどころといったところでしょうか。