日米両国の動きと立場を、リアルかつ「公平に」描いた作品
■作品名トラ トラ トラ!
■監督
リチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二
■主演
マーティン・バルサム、ジョゼフ・コットン、山村聰、三橋達也
■DVD/Blu-ray販売元
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
鳥居の真ん中に大きな日章旗を垂れ下げてあったり、甲板での訓示をするシーンでは、なぜか連合艦隊司令長官の山本五十六が文机を前に正座をしていたりと、おかしなところは多々ありますが。
この20世紀FOX製作の「トラ・トラ・トラ!」は、真珠湾攻撃にいたるまでの日米両国の動きとその立場を、リアルかつ「公平に」描いていると、日本では高い評価を受けています。
「戦勝国」アメリカでは、アクションシーン(ようはアメリカがかっこよく闘うシーン?)が少なくて退屈と、興行成績が振るわなかったようですが。
わたしは被爆都市広島で生まれ育ちましたので、小学校の頃より夏になれば学校で、第二次世界大戦の戦争映画を観てきました。
「黒い雨」、「対馬丸」、「はだしのゲン」。敗戦国である日本が製作したものだからなのか、戦争の悲惨さを訴えるためだからか。それらの映画は常にむこの民が「犠牲」になっていく様が描かれていました。
この映画は、違います。
先にあげたような日本文化に対する勘違いは少々あるものの、近年の戦争映画でよく見られるような火薬過多の大爆発もなければ、エセヒロイズムもありません。どちらかと言えばドキュメンタリーに近いのではないでしょうか。これをヴェトナム戦争の最中つくったというのが、また驚きです。あの頃のアメリカは自信に溢れていたのですね。
出撃前の万歳三唱のシーンや、女郎さんと思われる女性たちが出撃するパイロットたちを歓声をあげて見送るシーンを観れば、忸怩たる想いが込みあげてはきますが。この「トラ・トラ・トラ!」は、戦争を実際に知らない私たちこそ、観るべき映画だと思います。