日本の喜劇とどこか共通する、ハートフルな笑いのある作品
■作品名Mr.レディ Mr.マダム(原題:LA CAGE AUX FOLLES、1978年)
■監督
エドゥアール・モリナロ
■主演
ウーゴ・トニャッツィ、ミシェル・セロー
レナトはサントロペでゲイ・バー『狂人の檻』を経営し、店の看板スターでもあり、愛人のアルバンと暮らしていた。
ある日、前妻との間にできた息子ローランが帰省し、交際している女性と結婚するために、彼女の両親に会って欲しいと頼まれる。
ジャン・ポワレ原作の舞台劇を映画化した作品です。
日本など、今でも舞台で上演されている作品で、1997年にはアメリカでリメイクされました。
1973年、舞台の初演に出演したミシェル・セローも同じアルバン役で映画にも出演。
思い切りゲラゲラ笑えるコメディではありませんが、フレンチ・コメディ独特のクスッと笑える作品です。
喜劇と悲劇は紙一重……というような、登場人物はいたって真面目に問題に取り組み、何とかしようとするからこそ笑えるのです。
日本の喜劇とどこか共通する部分がありますね。
ゲイクラブの看板スターであるアルバンは、中年になって直面する”衰え”に焦り、失われた若さに嘆き、そしてイライラ。
アルバンを演じるミシェル・セローの自然な女性的な仕草は素晴らしい。
同じ女性から見ても、「そういう中年女性は確かにいるわ」と納得できるほどで、女性というものを女性よりわかってるな、と唸ってしまいます。
イタリア人のレナトの伊達っぷりが作品に品を持たせ、部屋の妙な装飾品なども、さりげなく味になっています。
それに、アルバンの着ている服がセンス良いのもポイントでしょうか。
舞台は南仏のサントロペで、カラッとした太陽の日差しが降り注ぎ、リゾート地らしいお洒落な雰囲気もまたこの作品の魅力です。
レナトとアルバンの仲は倦怠気味で揉めたりしますが、それでも互いに愛情が深く、絆があるというニュアンスの構成がほっこりと楽しめる所以だと思います。