一番、最初の仕事
私が行政書士業務として初めて扱った仕事も消費者問題でした。その後も開業してから2~3年はよくお問い合わせを頂きました。協議離婚書類作成や会社設立手続きを除けば、開業当初、もっとも相談を受けたのは、この消費者問題だったかもしれません。ところで、当時これらの請求に対しても返金に応じない悪徳業者がはびこっていました。返金の有無の連絡を依頼者から受けて、一喜一憂したことが懐かしく思い出されます。
なぜ流行が終わってしまったのか
「思い出される」って……。今は、どうかと言われると、ほとんど問い合わせがありません。いくつか要因があると思います。最大の要因は、消費生活相談センターの活躍だと思います。これは地方公共団体が設置している行政機関です。消費生活相談員などの専門資格を持った相談員が、消費者問題について無料で相談を行います。事業者と交渉してくれる場合もあります。ただ、消費者の代わりに書類作成をして、事業者に送付することまではしてくれません。しかし、問題解決に向けて果たす役割はとても大きいのです。
私は市民代表として、この消費生活相談センターの運営委員をしていました。そのため、相談員の仕事に触れる機会もありました。相談員の方は非常に熱心に取り込んでいらっしゃいました。行政書士業務を行政のサービスが代替するようになったのです。
また、消費者の意識向上、ITの普及により消費者の法律知識も向上しました。これらの要因により、消費者問題は急速に行政書士業務として衰退したと考えています。
消費者問題業務の栄枯盛衰から学べること
行政書士の業務は、行政サービスを超える価値がなければ、または、サービスを提供できなければ、仕事はないということです。厳しいようですがそれが現実です。もっとも、このような分野の業務においても、生き残る道もないわけではありません。本人が行うよりも安い値段でサービスを提供できれば仕事として成り立ちます。例えば、行政に相談する時間、書類作成に係る時間、これらを本人の仕事の時給で換算して、行政書士に依頼した方が安いのであれば、仕事を依頼するでしょう。当然、報酬は低額になります。
自分でできることを代わりに行ってもらっても依頼者は大金を払いません。自分でできないことを代わりに行ってもらうことに依頼者はまとまったお金を払うのです。では、そのような業務としてどんなものがあるのか、それは、この体験記を進めていく中でお話をしたいと思います。