電気自動車・EV/電気自動車・EV基礎知識

電気自動車に使われるモーターの種類と仕組み(3ページ目)

これまでモーターは様々な利便性を高めるニーズに応えてきました。そして、今日、新たに出現した「環境性能」というニーズに対し、既存の技術であるエンジンが応えられなくなり、代替としてモーターを主動力とする電気自動車の普及が求められるようになっています。今回は、モーターについての理解を深めていただくことで、電気自動車がもつ可能性の大きさをお伝えできればと思っています。

中島 徳至

執筆者:中島 徳至

電気自動車ガイド


新しいモーターのあり方:インホイールモーター

(図)NTNundefinedギヤリダクション方式 インホイールモーター

(図)NTN ギヤリダクション方式 インホイールモーター

AC、DCモーターの他に、モーターがホイールの中に搭載されるギヤリダクション方式のインホイールモーターとダイレクトドライブ方式のインホイールモーターの技術が注目を集めています。ホイールの内側は本来ブレーキシステムが入る場所でありますが、モーターと簡素化された油圧ブレーキがそこに入ることで、電気自動車特有の回生ブレーキと共に本来のブレーキ性能を十分に果たすことができるのです。一つ一つのモーターの大きさは小さいものですが、車輪4つ分のモーターを合わせて1台分のパワーを出せれば良いので、通常よりも小型のモーターで構わないことになります。インホイールモーターは、各ホイールの中にいくつかのモーターを搭載することで、直接車輪を駆動させます。それによって一つのモーターで動作させる現在の方式よりも、エネルギー効率が約2倍になると言われているのです。また、慶應義塾大学発ベンチャー企業であるSIM-Drive(シムドライブ)はダイレクト方式のインホイールモーター技術の標準化を目指し、産官学を巻き込んだプロジェクトを推し進めています。

(図)シムドライブ ダイレクトドライブ方式 インホイールモーター

(図)シムドライブ ダイレクトドライブ方式 インホイールモーター



電気自動車は、インホイールモーターを搭載し、床下にバッテリーを積めばそれだけで走るため、自動車の形の自由度は増すことになります。電気自動車のメリット・デメリットの項目でもお話しましたが、インホイールモーターはユーザーの多様なニーズに応える選択肢を広げる方法の一つとなり得るのです。

モーター技術がもたらす電気自動車化と外部環境に対する新サービスの構築

ここまでのように、モーターには大きく分けてACモーターとDCモーターの2種類があり、ガソリン車のエンジンと同様の役割を果たすものとして、非常に重要な役割を果たすことがわかりました。また、インホイールモーターと呼ばれる新しいモーター技術の開発が進んできていることも事実としてあります。今後は自動車業界がその優れた技術を活用し、自動車の中枢部品と言える動力に日本の固有技術である高性能モーターを採用することで、モータリゼーションをさらなる発展へと導くことができるのではないでしょうか。

そしてこの変化は単に動力の変遷を意味するだけでなく、製造やサービス等の内容の変化がそれに付随するのです。例を挙げると、整備業は、エンジンからモーターへと変わる事で整備内容が変化するのみでなく、動力部の整備項目が減少します。そのため、電気自動車用モーターを始めとする新技術の知識を蓄えて備えることに留まらず、新たな外部環境に対するサービスを生み出す必要が生じてくるのです。それは既存サービスの強化であったり異業種との連携であったりと、方法は様々でありますが、お客様のニーズを把握するマーケットインの視点を持つということに関しては、現代のサービスと変わらないものであります。これはニ―ズを具体化するプロセスを知っているアフターマーケット業界が、最も強みとするところであり、これまでガソリン自動車時代に培ってきた能力でもあります。その能力を十分に活かし、新たに訪れる電気自動車の時代に対応する商品開発を始めていく必要があると私は考えます。
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