1頭を追いかけると、競馬の魅力が見えてくる

競馬ファンに「競馬を好きになったきっかけ」を尋ねると、多くの人が「ある馬を好きになって、追いかけているうちに競馬のとりこになった」と言います。――1頭の馬を追いかける――これぞまさしく、競馬の醍醐味。ということで、皆さんにその楽しさをわずかでも伝えるべく、始まりましたこのシリーズ。

「追っかけシリーズ」と銘打ったこの一連の記事では、私が推しに推す馬(個人的に)の競走生活をひたすら追いかけていきたいと思います。あくまで、ファンとして。

問題はどの馬を追いかけるか。すでにデビューしている馬でも問題はありませんが、せっかくならば、これからデビューする馬を追いかけて、大活躍したらこれ見よがしに自慢したい。ということで、まずはデビュー前の競走馬から、私の“推し馬”を選びます。

追いかけずにはいられない、あの馬の仔

競走馬のデビューは2歳の夏以降。2013年の場合は、6月1日から2歳戦がスタートし、1年後の5月末に行われる同世代決戦、日本ダービー(芝2400m、東京競馬場)を目指して凌ぎを削ります。
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デビューから追いかけた馬が日本ダービーの舞台に立てたとき、一筋の涙が頬を伝うでしょう!(写真 JRA)

例年、春になると、今年デビューの2歳馬にはどんな馬がいるのか、母や兄姉に活躍馬がいる良血や、牧場期待の馬などが話題になります。その中で、私が今回、目をつけた馬。いや、正確には昨年の冬から目をつけていた馬がいます。それがシャドウダンサーです。

シャドウダンサーのプロフィール(私は毎日2回、このページを眺めています)

シャドウダンサーの母は、2003年から2006年まで現役生活を送り、G1を2勝した名牝ダンスインザムード。ダンスインザムードは、姉も兄もG1馬で、父は幾多の名馬を輩出し、「日本の競馬を変えた」とまでいわれるサンデーサイレンス。まさに「超」のつく良血馬です。
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デビューから圧倒的な強さを見せたダンスインザムードですが……(写真 JRA)

田舎生まれの私は、どちらかというと、こういったお嬢様は苦手なのですが、ダンスインザムードは違いました。というのも、確かに強い。メス同士なら別格と言ってもいい強さなのですが、しかし、それ以上に気が荒い。とにかく気が荒くて、勝ったり負けたり。能力を出せたり出せなかったり。

ダンスインザムードがデビューから4連勝でG1を制した時は、「今後、いったいどれだけのタイトルを獲得するのか」と騒がれたのに、その後は10着以下に何度も沈む大スランプを経験。約2年間、勝ち星がないという状況に陥ります。

能力の衰えなら仕方ないのですが、ダンスインザムードの場合は完全に精神的なスランプ。レースが嫌になってしまった。しかし、スタッフの懸命な努力で再び輝きを取り戻すと、ダンスインザムードは2年ぶりの勝利を再びG1で決めるのです。

田舎育ちの私は、こんな王道ストーリーに弱いのです。

母もいいけれど、父もまたシブい!

そのダンスインザムードが生んだ4番目の仔がシャドウダンサー。ダンスインザムードは母としても素晴らしく、初仔で重賞を制したダンスファンタジアをはじめ、3頭の仔がすべて勝ち上がっています。毎年7000頭生まれる競走馬の中で、1つ勝つというのは、簡単なようで実はすごいこと。それをすべての子どもが達成しているのは、まさにダンスインザムードが良き母である証です。

そしてまたシャドウダンサーの父が、なんともシブい。父であるホワイトマズルは、ヨーロッパで現役時代を過ごした後、種牡馬(繁殖用の種馬)として日本へ。その後すぐに、受胎率の低下という、種牡馬としては致命的なハンデを背負いながらも、コンスタントに活躍馬を輩出。コツコツとその地位を確立してきました。

波乱万丈の現役生活を送った母と、異国の地でコツコツ頑張る父。そんな異色コンビを親に持つシャドウダンサーを応援しない手はありません。田舎から東京に出て来た私は、こういう馬に弱いのです。

次ページでは、競走馬へと一歩ずつ近づくシャドウダンサーの姿をレポートします。