キッチンの食品庫をゴミ置き場にするべからず
〈収納リフォームの掟-1〉
キッチンの収納リフォーム、1つめの掟は「食品庫をゴミ置き場にするべからず」です。昔に比べて保存食品や調味料の種類は格段に増えています。各国のスパイスを始め、レトルト食品、乾物、缶詰、瓶詰め、お米、水、ジュースなど数え切れないほどの食品をストックしている人も多いことでしょう。ガイドYuuは、今までたくさんの家にお邪魔していますが、保存食品を改めて整理整頓してみると、出てくる出てくる!吊り戸棚やシンク下はもちろん、冷蔵庫の上にあるカゴ、食器棚の扉の中、足元の段ボール、その他キッチン以外の部屋の押入れや階段下の収納など、ありとあらゆる場所にストック食品が仕舞い込まれていることがよくありました。
このような状況では、気付かないうちに賞味期限が切れたり、同じものを複数購入してしまったりと言うようなことが起きやすくなります。
キッチン脇に作られたウォークスルータイプの食品庫。何でもスッキリ片付く(食品庫で献立の悩みを解決、キッチンリフォームの極意より)
災害時の備蓄品を含めれば、ストック食品はかなりの量になりますので、キッチンセットについている食品庫スペースだけでは入りきらないこともあります。せっかくリフォームをしたのに入りきらず、また新たに食品用の収納ボックスを買い足したケースもあります。プランを考える際は、我が家の食品量を確認し、全て一か所にまとめて収納できるよう、少し大きめを意識して計画しましょう。
幅90cmの壁面収納タイプの食品庫。使用頻度の高い物は中段に、重い物は下段、頻度が低い物は上段に(クリナップ)
と言っても、容量が大きければいいというものでもありません。久しぶりに食品を整理してみたら、8年前のレトルト食品が出てきた!なんてことが起きるのは、食品庫の作りがよくないからです。長期間忘れ去られた、食べられない食品は残念ながらゴミでしかありません。
ゴミ置き場になってしまいやすい食品庫は、容量は大きいけれど奥が見えない、位置が悪くて手が届きにくい、キッチンから離れた場所にあるものです。
作業位置から近く、また内部をひとめで見渡せる作りになっていれば、食品の整理整頓がしやすく、料理もスムーズに進みます。奥行きが45cm以上ある場合は、アミ棚や引き出しカゴを取り付けるなどして、奥まで見やすく、出し入れしやすい作りにしておきましょう。
デッドスペースになりがちな部屋のコーナー部分をうまく利用した食品庫。アミ棚なら重なる部分も見えやすい(LIXIL)
〈ワンポイントアドバイス〉
キッチン収納を小さくしたら買い物の仕方が変わったケースも
食品庫に大きなスペースが取れない場合は、ストック食品の量を減らすという選択肢もあります。実際に、食品庫を小さくしたら買い物や生活の仕方が変わり、身軽に暮らせるようになったという人もいます。収納に合わせて暮らすか、暮らしに合わせて収納を作るか、どちらにしても生活に大きな影響を与える大事なスペースですので、しっかり計画を立てましょう。
調理家電を使うかどうかは、取り出すまでのハードルで決まる
〈収納リフォームの掟-2〉
キッチンの収納リフォーム、2つめの掟は「調理家電を使うかどうかは、取り出すまでのハードルで決まる」です。炊飯器、電子レンジ、フードプロセッサー、コーヒーメーカー、ミルミキサー、ホットサンドトースター、ホームベーカリー、ハンドミキサー、ブレンダー、たこ焼き器、ワッフルトースターなどなど。皆さんの家にも、最低5個以上はあるのではないかと思います。
しかしそれらを全部使いこなせているかと言えば、しまい込んだまま忘れている人も多いのではないでしょうか。その原因は、収納にあります。吊り戸棚の奥や、シンクの下にしまい込んだ家電は、出すのもメンドウ、しまうのもメンドウ。そのうち忘れ去られてしまうことも少なくありません。
家電は棚に一列に並べて収納しておくと、自然に使いこなすようになる(パナソニック)
調理家電は使ってこそ価値があります。使いこなすための最初の一歩は、出し入れのハードルを下げることです。お勧めは壁面収納を設置して、そこにずらりと並べておくこと。すぐ目について、パッと手に取ることができれば、今日はこのブレンダーでドレッシングでも作ろうかしらという気にもなります。
手持ちの調理家電を全て使いこなすことができたら、料理が楽に、メニューのバリエーションも豊かになります。リフォームの際には、家電専用の収納スペースを忘れずに、今後も増えていくことを考え、余裕のある計画を立てましょう。
〈ワンポイントアドバイス〉
扉をシャッターや引き戸にすれば開けっ放しで作業できる
キッチンは油煙によるベタベタ汚れが付きやすい場所ですので、家電収納はできるだけ扉を付けておきましょう。お勧めは開けっ放しでもジャマにならない引き戸やシャッターです。ただし炊飯器やトースターなど、蒸気や熱を発生する製品は扉内では使用せず、また周囲に蒸気と熱の対策を行っておきましょう。
キッチンの高いところは使わない、低いところも使わない
〈収納リフォームの掟-3〉
キッチンの収納リフォーム、3つめの掟は「高いところは使わない、低いところも使わない」です。出し入れがしやすい高さは、腰の位置から目の高さまで。そこから外れた高さにある収納は、出すのも面倒、仕舞うのも面倒なので、だんだんと使わなくなっていきます。例えばせっかく買った圧力鍋も、吊り戸棚やシンク下のキャビネットの奥の方に仕舞い込んでしまえば、出し入れに手間が掛かるので、煮込み料理はまた今度、なんて事になりがちです。
使用頻度が高い食器や鍋は、出し入れがしやすい腰から目の高さの間に収納するのが基本です。しかしそうは言っても、限られた面積のキッチンでは、高いところや低いところも上手に活用したいもの。そこで活躍するのが、高くても低くても自然な姿勢でラクに出し入れできるように工夫された収納セットです。
電動で一気に目の前まで収納庫が降りてくる。高い位置にある吊り戸棚も普段使いの収納庫として使いこなせるようになる(クリナップ)
例えば椅子に上らないと届かない吊り戸棚も、電動昇降式にすれば、目の前で出し入れできるようになるので、普段使いの収納スペースになります。低い位置なら引き出し式にすれば、腰をかがめることなく、上からひと目で見渡せ、楽に出し入れできるようになります。
キッチンの収納リフォームを成功させる大きなポイントは、使いにくい場所をいかに使いやすくするかにあるのです。
〈ワンポイントアドバイス〉
何となく付けておこうはリフォーム費用のムダ遣い
吊戸棚を電動昇降式にすれば、その分費用が掛かります。しかし、どうせ付けるなら使うものを取り付けましょう。吊戸棚が無いと何となく不安だから。そんな理由で取り付けるのはリフォーム費用のムダ遣いです。死蔵品置き場にするくらいなら最初から付けないという選択肢も。その分の費用で他を充実させるなど、本当に暮らしに役立つリフォーム計画を立てましょう。
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