「不動産投資信託」(J-REIT)の登場に至るまでの法律の改正の流れをみてみましょう。
歴史は古くから? |
この法律がのちに改正を繰り返し不動産投資信託(J-REIT)の登場の結果とつながっていきます。
改正その1 1998年
1998年12月には日本版ビックバン(証券分野の規制緩和や銀行や保険会社などの業務改正、また会計制度を国際基準にあわせるための商法改正など国際ルールの下で幅広い金融商品を互いに販売できるようにしようということを目的に金融システムの全面的改革)のもと「証券投資信託法」が改正されました。
「証券投資信託法」
→「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」と名称が変わりました。
それまでの投資信託といえば「契約型」と呼ばれ投資委託会社が信託銀行に資産を委託し運用方針を指図します。そしてその信託受益権を小口化に分割して投資家に販売するという、昔ながらの投資信託がこの形です。
『契約型』
信託の設定 | ||||
運用指図 | ||||
…………→ | ||||
投資家 | ←………… | 投信委託業者 | ←………… | 信託銀行 |
信託受益権 | 信託受益権 | |||
信託分配金 | 信託分配金 |
現在の日本の証券投資信託は全てこのような形態となっています。
この改正により「契約型」のほかに「会社型」が認められるようになりました。
「会社型」とは証券投信を目的とする会社を設立して、その会社が投資資産を自ら所有します。この会社自体の株式価値はイコール投資資産の価値となります。そして投資商品として販売されるのは会社の株式そのものです。投資家は株主となり会社の運用収益の分配を受けるかたちになります。これが「会社型」で、正式名称は「証券投資法人」となります。
『会社型』
投資口・配当 | 運用委託 | |||
投資家 | ←………… | 投資法人 | ………→ | 投信委託業者 |
この改正では、その他に銀行等による投資信託の窓口販売の導入や外貨建て投信の導入、投資会社の免許制から許可制への切り替えなどの大改革が行なわれたのでした。
日本において投資信託は、従来「主として有価証券」に対する投資の仕組として位置づけられてきました。これまでの法律では運用対象を「主として有価証券」という規定があることで不動産を運用対象に加えることが出来ませんでした。
そうした中で不動産を小口化や証券化することで不動産の流動化を図ろうという試みが進められていました。
95年に(不動産の小口化商品に関する)不動産特定共同事業法の策定や98年には(特定目的会社による特定資産の流動化に関する)SPC法が改正され、これに準じて不動産商品も開発されましたが、実際は“不動産投資信託”と言えるほどの商品としては不十分でした。
2000年11月に“不動産投資信託”の登場へとつながる「投資信託及び投資法人に関する法律」と改正されました。(改正投信法)
改正内容は投資信託の対象に有価証券以外に不動産(その他の資産)にまでおよぶ大幅な拡大となりました。
そして2001年3月には東京証券取引所は“不動産投資信託”(J-REIT)の上場の上場基準などの規制を制定しました。
その結果、不動産から収益を分配するJ-REITの上場が実現し現在の市場の拡大とつながりました。
“不動産投資信託”はそれまでの現物不動産投資に比べ有価証券のような換金性や流動性をもち、投資リスク分散や投資金額の小額化を実現し投資家のニーズに答える商品の1つとなりました。
不動産投資信託の歴史は短いといってもよいでしょう。今後も様々の改正とともに発展を続けることを期待したいものです。