そうだ、行政書士に依頼しよう
残された道は行政書士に依頼するしかありません。何かの本に「最初は先輩行政書士と仕事をして仕事を覚えなさい」と書かれていたことを思い出したのです。行政書士による行政書士選びです。弁護士ならば、論文や著書などで専門性を判断することができますが、行政書士はそうはいきません。情報がほとんどないので、仕方なくホームページで検索をかけていきました。
何気ないホームページも本気でみると違います。実力がわかるのです。構成力、文章力、法律の知識、法令遵守に対する考え、業務指針、そして、経験。これらがにじみ出ていました。見比べるとその差は顕著でした。
私はある先生に決めました。早速、諸事情をお話ししてご協力を仰ぎ、ご快諾を頂きます。今回は勉強をさせて頂く対価として報酬を全部お渡しする旨を伝えました。しかし、御厚意によって共同受任という形をとって頂き、報酬も半分ずつにしようというお話を頂きました。
もちろん、公職である以上、依頼者の利益を第一に考えなくてはいけません。当然ですが、依頼者には、正式に受任する際に、初めての仕事であること、依頼者の利益を護るために他の行政書士と共同受任をすることを告げて、それでもよければ受任させてくださいとお話をしました。
依頼者からも承諾を頂き、先生に支えられて、無事仕事は終わりました。先生のお蔭で良い経験をさせてもらい、実務能力を少し身につけることができたと思います。「すこしのことにも先達はあらまほしき事なり」を実感しました。
時を経て……
あれから10年近くが経ちました。私は、行政書士登録した受講生に対して、仕事の立ち会いの機会を設けるようにしています。実戦に勝る経験なしと思っているからです。新米行政書士は、謙虚に、見栄をはらず、出来ないことやわからないことは依頼者に正直に告げるべきです。事務所に帰ってから調べればいいと思います。ただ、わからないことを先輩行政書士や行政庁にすべて質問するようでは、力はつかないでしょう。苦労して初めて実務能力が身についていくと思います。
ただ、苦労と言っても、「あの」ような苦労をしてはいけない。次回は、「あの」苦労、開業してしばらくして訪れた最大の危機についてお話しする予定です。ただ、思い出すだけで胃が痛くなるのです。もし次回テーマが違っていたらお察しください。