はじめに
ホームページの検索上位が功を奏し、メールボックスに問い合わせが飛び込みます。また、人づてに紹介を受けるようにもなりました。いよいよメイン業務で正式な依頼かも……。心地よい緊張に包まれた瞬間、不安が私を呑み込みます。それもそのはず、当時、私には実務能力がありませんでした。絶望的な楽観主義
講師を長年していると、合格者から開業の相談を受けます。合格者は、生計を立てられるかとともに、「どうやって実務能力を身につけるか」で悩むのです。しかし、私は開業に際して、この極めてまっとうな悩みを経験しませんでした。第一回でお話ししたように、本人確認証を得るために登録したからです。それなのに、業務を行おうというのです。
実は、人気少年漫画の主人公達に負けないくらいの絶望的な楽観主義者なのかもしれません。ただ、彼らと違って、私には特別な能力もなければ支えてくれる仲間なんか誰一人いないのです。救いようがありません。
さあ、本当に困りました。司法試験のように試験合格後に入所する司法修習所があるわけでもありません。弁護士のように事務所に入って下積みを重ねて実務能力を身につける慣習もありません。行政書士には実務能力を身につける場がないのです。
自分で何とかしなければなりません。
書籍・書士会研修・任意研修
まずは書籍を読みあさりました。依頼に関係する専門書や一般書にも手を出しました。しかし、駄目です。総論的なことしか書いてありません。実務能力が備わったという実感が全く得られません。次は、行政書士会の研修をあたりました。研修は各都道府県の行政書士会単位で行われます。資料代などを除けば無料であることが多く、行政書士登録をすれば研修に参加でき、研修を録画したDVDや資料の提供も受けられます。
しかし、5000以上ある行政書士業務を網羅するのは当然無理で、研修は主要業務に限定されていました。調べましたが、依頼に関する研修はありませんでした。
現在、新人研修はかなり充実しているようです。
いつものことですが、パソコンの前で途方にくれます。