大量の国債を持つMUFGは金利上昇の影響も受けやすい
もう一度、決算書(貸借対照表)へ目を向けてみましょう。今度は総資産234兆円の内訳を見てみます。特に目を引くのが、有価証券80兆円です。さらに詳しく決算書を読み込むと、48兆円もの国債を保有していることがわかります。
金利が上昇していけば、この莫大な額の国債は、徐々に価格が低下していき、MUFGは多額の含み損を抱えてしまう可能性があります。なお、MUFGの純資産は、13兆円(2013年3月末)ですから、上記の国債価格が28%下落すれば債務超過に転落してしまいます。
金利上昇が経営に重大な影響を与えることがわかります。
【図 国債を大量に保有】
さらに決算書を読み解いていくと、2013年3月期の経常利益1兆3400億円のうち、国債や外債の売却益が3900億円もあるのです。
国債や外債の売却益が発生するのはどのようなときでしょうか?
そうです、金利が下落したとき(国債価格が上昇する)や、円安になったとき(外債価格が上昇する)です。2012年11月14日に野田元首相が解散宣言をして以降、金利低下、円安が進みました。それによって国債や外債の価格が上昇し、MUFGはこれを売却して利益を計上しています。
このように、金利や為替の影響で大きく業績も変動してしまうのです。金利の動向は景気の動向と言い換えてもよいでしょう。結局のところ、MUFGを含む銀行株は、景気動向と為替変動に首根っこをつかまれているわけです。
売買代金ランキング、就活人気企業ランキングでは常に上位ですが、さて、投資対象として魅力を感じますか?景気動向や為替変動を予測できる人にしてみれば、銀行株はお手のものでしょう。でも、個人投資家のみなさん、景気動向や為替変動を予測する自信はありますか?銀行株に手を出すならば、まずはマクロ経済を勉強し、景気(金利)と為替のメカニズムを勉強するところからですね。
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