演歌・歌謡曲/歌謡曲 あの人この人

DJジョーがふりかえる歌謡DJシーン 後編

1995年から歌謡DJの草分けとして活躍してきたDJジョー。横山剣、小泉今日子、大西ユカリなどのスターと共演し、テレビでコーナーを持つに至った輝かしい経歴と、歌謡曲DJシーン黄金期、そして落日を語る。後編

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド

前回の記事『最古の歌謡DJイベント!オリエンタルソウルパラダイス』でDJジョーさんにインタビューをおこなったところ、話は予想以上の盛り上がり。DJジョーさんの経歴をひもとく中で日本の歌謡DJイベント史について貴重な証言を得ることができた。
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深い歌謡曲を追及するDJジョー


『僕を呼んでおくれ』で一躍脚光!

ガイド:ジョーさんがDJとして脚光を浴びたきっかけはアメリカ村のグランカフェで開催されていた『僕を呼んでおくれ』だということですが。

ジョー:そうやね。長年相方として組むことになるDJの樋口さんが、企画して「僕を呼んで」くれたんです。1997年に始まったんやけど、いわゆるクラブらしいクラブで和モノオンリーのDJイベントというのは画期的やったんちゃうかな。

ガイド:今でこそJ-POPやアニソンのクラブイベントなんか当たり前ですけど、ほんの何年か前でも和モノだと企画自体通らないなんて話はよくありましたもんね。

ジョー:アンダーグラウンドではあったけど、大きなクラブにとっては前例がなかったしね。前にも言った通り、流行のJ-POPもおりこみながらではあったけど、先入観のない不特定多数のクラバーに対して歌謡曲でワイワイお酒飲んだり踊ったりできるってことを提示できたのは我ながら大きかった。

ガイド:かなりいろいろあると思いますが、反響はいかがだったでしょうか?

ジョー:そうだね。ほんといろいろあるけど……一番大きいのはテレビ番組の枠ができたことやね。1998年、KBS京都の『HIP-POP』っていう番組の中に『ジョーとヒグチの僕を呼んでおくれ』っていうコーナーが始まった。
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ジョーとヒグチの僕を呼んでおくれ


ガイド:これはどういう経緯があったんでしょうか?

ジョー:『ヒップポップ』はGIZAっていうレーベルのアーティストを紹介する番組だったんだけど、それだけだとあまりに宣伝色が強いので、なにか色の違うコーナーを作りたがってたみたいなんやね。そこでグランカフェの社長をやっていた元オックスの岡○志○さんのコネクションで僕たちがそこに抜擢されることになった。

ガイド:グランカフェって岡○志○さんが関わってはったんですね!

ジョー:単なる同姓同名と思ってたけど、聞いてみたら本人でびっくりした(笑)。まぁ、それはともかく、レコード紹介したりイベントにカメラが入ったりして面白い経験やったよ。実現はしなかったけど、デビュー前の倉木麻衣ちゃんを実績作りのために出演させてくれって話がきたりね。

あと別の反響として、雑誌の取材も多かった。『SWITCH』とか『カジカジ』関連の『Cstm』とか。『Cstm』では横山剣さんと対談もさせてもらった。


横山剣との出会い

ガイド:剣さんとのご縁はその時からになるんですね。

ジョー:うん。元々はヒグチさんが知り合いで、『僕を呼んでおくれ』にゲストDJとして出演いただいたのが、きっかけだね。当時は急速に全国に横のつながりが広がっていって、ずいぶんいろんなイベントに出演させてもらったけど、それも剣さんの影響力が大きかったと思う。いまだにイベントに花を送ってもらったり、本当にお世話になってる。

ガイド:たびたび共演もしておられますよね。

ジョー:ABC朝日主催の『キャバレーナイトフィーバー』とかね。大阪千日前のキャバレーサンが会場で、クレイジーケンバンド、大西ユカリと新世界が出演する豪華イベントだった。剣さん単体でも、『僕を呼んでおくれ』の四周年やサミー前田が東京のロフトプラスワンでやってた『真夜中のゴーゴー!!』でご一緒させてもらったね。

全国的に盛り上がっていた歌謡DJシーン

ガイド:今ではなかなかない豪華さですね。当時、昭和・歌謡曲系のイベントが各地で開催されていましたが、印象的なものを教えてください。

ジョー:いっぱいあったけど、中でも名古屋でTHE OTHERっていう古着屋さんがやってた『アングラポップ』は楽しかったな。スキャッツっていう女の子3人組の60'Sアイドル的なグループを観てすごく感動してね。その時が解散ライブだったんだけど、無理を言って大阪でもう一回解散ライブしてもらった(笑)。
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スキャッツ

地元ならグランカフェで『 K-KOIZUMI RESPECT NIGHT』っていうイベントがあって、シークレットゲストに本物の小泉今日子さんが来てハグしてもらって気絶したのもいい思い出だし……

あと福岡でタクミ君がやってた『ラブロック』もあいさとう、渚ようこコモエスタ八重樫、ザ・ヤング、THEE 50'S HIGHTEENSとかいろんな人とご一緒したなぁ。

ガイド:キョンキョンは羨ましい!!しかし、DJばかりじゃなくて、アーティストやバンドとのつながりも多かったんですね。今もご活躍の人もいますがTHEE 50'S HIGHTEENSとか懐かしいですねぇ。GS系ガレージパンクバンドの最右翼というか……
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激しいステージングと絶妙なガレージGSぶりで定評のあったTHEE 50'S HIGHTEENS

ジョー:ひとくちに歌謡曲やGSと言ってもいろんな方向からの解釈があったよね。ファッション界からのアプローチもあったし。そういう動きが重なって2002年~2003年頃のムーブメントになっていった。

近年の歌謡DJシーン

ガイド:ここ10年を振り返ると、歌謡っぽいバンドやアーティストはそれなりに残ってますが、歌謡DJシーンは少しずつ衰退しているように感じます。大阪で言えば『歌謡deポン!!』みたいな新しい動きもありますが、100人以上動員する大型イベントにはここしばらくお目にかかっていません。

ジョー:当時のお客さんの生活環境が変わって、なかなかイベントに顔を出せなくなってしまったこともあるだろうけど、配信やダウンロードで音楽を聴く時代になって「音楽はタダ」「音楽は個人で楽しむもの」っていう感覚が出来てしまったことも大きいと思うね。クラブにお金払って、みんなでお酒飲みながら音楽を楽しむという人自体が減ってるよね。

数年前にアニソンイベントがブームになって歌謡曲DJシーンにもいい影響があるかなと思ったけど、結局なにもなかった。でも、僕みたいなじっくり聴かせるスタイルの需要は絶対になくならないはずだし、しばらくは待ちの姿勢でがんばるよ。

ガイド:昔のお客さんがまたイベントに顔を出せるようになることもあるでしょうし、少ないながらも有望な若手も出てきていますからね。

最近の音楽はダメ

ガイド:流行の音楽にはどんな印象を持っておられるでしょうか?

ジョー:基本的にチェックしてないね。新譜はクレイジーケンバンドか面影ラッキーホールか大西ゆかり、渚ようこその辺りしか買わない。

ガイド:音楽番組を観ることはありませんか?

ジョー:たまたま観ることはあるけど、まったく魅力を感じないね。バンドもいっぱいいるみたいだけど、サウンドのルーツが見えにくくて面白くない。

ガイド:たしかに音圧ばかり分厚くなってバンドサウンドとしての魅力をもってるバンドは少ないですね。ロックンロール、R&B、湘南サウンドみたいにサウンドやリズムでのカテゴライズがしにくいです。ファッションとかカルチャーとの結びつきも感じにくい。

ジョー:そうやね。あと歌詞も作文調になってしまって程度が低いのが多いね。ファン○ーモン○ーベイ○ーズみたいなタイプは嫌だなぁ。聴きたくない。昔の歌謡曲の歌詞の奥深さとか、ロックにしても甲斐バンドのような情熱がまったく感じられない。中にはいいもの作ってる人もいるんだろうけど、ダメなものが多すぎてなかなか届いてこないよね。

ガイド:思いのたけを語っていただけて嬉しいです。こういう展開大好きです(笑)。

今後の展望

ガイド:いやいや、今回は長くお話しいただいてありがとうございました。最後に今後のDJとしての展望をお聞かせいただきたいです。

ジョー:こちらこそありがとう。展望……か。一度、ラジオのディスクジョッキーをやってみたいなぁ。これまでDJイベントでやってきたようにおしゃべりしながら曲を紹介していくスタイルでラジオ番組をやってみたい。理想は「AMみたいなFM番組」やね。

ガイド:いいですね。ラジオ局関係者の方!!この記事を読んでたらぜひご一報ください!!
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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