ハウスメーカー・工務店/有力ハウスメーカー紹介

日本の住宅技術が世界へ セキスイハイムinタイ(前)

先日、私はセキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)のタイにおける戸建て住宅事業の取り組みを取材してきました。日本の住まいづくりと海外のそれを比較することで、皆さんの参考になることもあると思われますので、2回にわけてそのレポートをお届けします。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

日本のハウスメーカーが今、海外の国々で住宅づくりを行っていることを、皆さんはご存じでしょうか。そうしたハウスメーカーのチャレンジは、ここ数年で顕在化したものですが、いよいよかたちとなって成果が現れてきました。先日、私は海外進出を果たしたハウスメーカーの一つ、セキスイハイム(積水化学工業住宅カンパニー)がタイで展開している戸建て住宅事業の様子を見てきました。前編・後編の2回に分けてご紹介します。

ハウスメーカーがなぜ今、海外に進出?

まず、日本のハウスメーカーがなぜ海外に進出しているのか、ということからご説明します。その背景には我が国が抱える少子高齢化と人口減少という問題があります。それらの影響で、長期的に見ると日本の住宅需要が大きく減ってしまう可能性があるのです。

バンコクの街なみ

経済成長著しいタイの首都・バンコク中心部の様子。手前には一般的な街なみと、奥には超高層ビルやマンションが林立する様子がうかがえる(クリックすると拡大します)

そうなると、国内で住宅を建てるばかりだと、将来的に今以上に競争が激しくなりますから、将来的な経営の安定と企業の存続が危うくなるのです。そうした日本の住宅市場の先行きが、ハウスメーカーの海外進出に表れてきているというわけです。

次にアジア諸国の経済的発展も関係しています。現在、アジアを中心に経済発展が続いており、中国は日本を抜いて世界第二位のGDP(国民総生産額)を記録する国となりましたし、お隣の韓国も日本の経済的なライバルとなっています。さらに台湾やタイ、マレーシア、インドネシアといった国々の経済発展もめざましいものがあります。

進出先にはアメリカやオーストラリアなども含まれており、こうした国々では日本と比較して長期的に安定的な住宅需要が見込まれています。いずれにせよ国内外の人口動向や経済状況などがからんで、ハウスメーカーはそれらの国々に進出することで、将来的な生き残りを図ろうとしているわけです。このようなことが今回のお話の大前提となります。

そうはいっても海外進出は簡単なことではありません。特に住まいの分野においては。というのは、住まいというのはそれぞれの国の文化に根ざすものだからです。例えば日本には玄関で靴を脱ぐという習慣がありますが、それは欧米諸国ではない習慣です。

住まいは文化! 容易ではない海外進出

これと同じようなことが、世界各国には様々にあるわけです。ですから、日本の住宅をそのまま輸出するだけでは商売は成り立ちづらいのです。そこが自動車や家電の分野との大きな違い。各国の文化を十分に理解して、それを住まいや暮らしに落とし込むということがより重要になり、それは実は大変な作業なのです。

タイの一般的な住宅建設の風景

タイの一般的な住宅の建設風景。鉄筋コンクリートの柱と梁の間に、レンガやブロックの壁を入れ込む構造だ。工期が長く、足場も非近代的で危なそうだ(クリックすると拡大します)

実は、過去には海外進出にチャレンジしたあるハウスメーカーがありました。ドイツで住宅を販売しようとしたのですが、結果的に撤退。当時の経営者の回顧録が残っているのですが、その中で「ドイツでの事業の失敗は高い授業料だった」と語っているほどです。

これは1970~80年代くらいのお話。住宅を海外で建設し、現地のユーザーに満足してもらうということは、非常に難しいということがこのことからも分かると思います。ですからその後、今に至るまで、海外での住宅供給は不動産会社によるマンションディベロッパーとしての進出が主になりました。

とはいえ、当時から30年ほど経過すると、世の中は大きく変化しています。日本国内では低成長化経済、超高齢化社会が到来し、アジアの国々では高度経済成長の時代を迎えています。日本の住宅産業には、従来のような日本だけで住宅を建てる内需型事業では将来を見据えられない状況が訪れている、というのが今の現状なのです。

一方で、「クールジャパン」に代表されるように日本の文化がアジアを中心にずいぶんと浸透するようになってきました。おそらく皆さんも自動車や家電、さらにはアニメキャラクターなどが大きな人気を集め、それぞれの国々で親しまれていることをご存じだと思います。そうした追い風に今乗ろうとしているのが、日本のハウスメーカーだともいえそうです。

次のページでは、このような前提をご理解頂いた上で、本題であるセキスイハイムがどのようなことをタイで行っているのか、まずは生産や施工の点を中心にご紹介します。
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