「液状化マップ」の確認で大地震に備える
この度の北海道胆振東部地震や東日本大震災、阪神淡路大震災など、近年の大地震では埋立地などで液状化に伴う地盤沈下や建物被害が多数報告されています。これから家を買う人は、その土地の液状化のしやすさをまず調べることをお勧めします。また、すでにお住まいの地域の液状化のしやすさを把握しておくことも大切です。今回は、大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山の液状化マップをご紹介いたします。<INDEX>
・大阪府の液状化マップ
・兵庫県の液状化マップ
・京都府の液状化マップ
・滋賀県の液状化マップ
・奈良県の液状化マップ
・和歌山県の液状化マップ
大阪府の液状化マップ
■大阪府 震度分布・液状化可能性(平成29年12月28日更新)【図1】南海トラフにおいて発生する可能性のある最大級の地震を想定した時の大阪府の液状化可能性 クリックで拡大(出典: 大阪府を元に作成 )
【図1】は南海トラフ地震において発生する可能性のある最大級の地震を想定して大阪府が作成した「液状化の可能性」です。あくまでも予測できる最大級の被害を予測したもので、次の地震でこのような被害が出ることを示したものではありません。【図1】は大阪府の全体図を示していますが、より詳細な図(2万5千分の1)も公開されています。
■液状化の危険度を示すPL値
判定値にはその地点での液状化の危険度を現すPL値を使っています。一般的にPL=0.0であれば液状化発生の危険性がないか極めて少ない、0.0~5.0ならば液状化の可能性が低く、5.0~15.0ならば液状化の可能性がある、15.0以上であれば液状化の危険性が高いと判断されます。
■液状化による建物被害
また、大阪府では液状化による建物被害数も推計しています。それによると、大地震発生による建物被害(全壊)は17万9,153棟に及び、そのうち液状化による建物被害は7万1,091棟で約40%を占め、揺れ、津波、地震火災などよりも多くの建物が液状化により被害にあうと想定しています。
【図2】1980年以前の木造建物棟数と液状化による建物全壊率(出典:大阪府)
ちなみに大阪府の全建物棟数は253万162棟、液状化による建物半壊も18万1,566棟と想定しており、全壊と合せると25万2,657棟となり、大阪府の建物の10棟のうち1棟が液状化により半壊以上の被害を受けると想定しています。
兵庫県の液状化マップ
■地震予測結果及び液状化危険度予測結果(概要)平成22年5月20日P25 液状化限界震度
【図3】海溝型地震による液状化限界震度分布 (出典:地震動予測結果及び液状化危険度予測結果(概要)兵庫県)
【図3】の海溝型地震による液状化限界震度分布図は、液状化が極めて高い確率で起こる震度(=液状化限界震度)の分布図を示しています。限界震度が低い地域(紫・赤)では震度5弱程度の地震でも液状化が発生することになり、液状化の危険度が高い地域となります。反対に限界震度が高い地域(グレー)は、震度7程度の大きな震度にならないと液状化が発生しないため、液状化の危険度の低い地域ということになります。最も面積の広い黄緑色の地域は、震度6強以上で液状化が発生すると考えられます。
【図3】によると神戸・阪神地区の大阪湾沿岸で震度5弱・5強・6弱・6強で液状化が発生する可能性のある地域が集まっています。明石海峡を挟んで播磨灘沿岸も震度5強で液状化発生の可能性がある地域があります。
東南海・南海地震を「海溝型地震」、その他を「内陸型地震」と分け予測ししており、海溝型地震は強い揺れが長時間継続するため、震度が小さくても液状化が発生しやすくなると予測。内陸型地震は強く揺れても継続時間が短いため、かなり大きな震度にならなければ液状化は発生しないと考えています。このため、海溝型地震と内陸型地震では結果が異なり、海溝型地震の方が液状化を発生しやすいと言えます。
京都府の液状化マップ
■地震被害想定調査マップ(断層別)京都府・市町村共同総合型地理情報システム
京都府域へ影響があると考えられる22の活断層及び東南海・南海地震について、地震被害想定調査を実施してその情報をホームページ上で公開。液状化の危険性については「京都府・市町村共同統合型地理情報システム」(外部リンク)で詳しい情報を掲載しています。調べたい場所(住所)を入力すると、その場所の震度分布図や液状化危険度分布図を、活断層別にみることができる。快適にサクサク検索できて便利なシステム。
【図4】は京都府庁のある上京区藪之内町付近の液状化危険度分布図。紫の部分が液状化の危険度「大」、赤の部分が危険度「中」、オレンジの部分が危険度「小」、白の部分は液状化危険度「なし」、となっています。
滋賀県の液状化マップ
■液状化危険度図(内陸直下型、海溝型)滋賀県防災情報マップ
滋賀県防災情報マップのトップページに「水害・土砂災害リスクマップ」「水害リスクマップ」「土砂災害リスクマップ」「地震リスクマップ」など60種類以上の防災マップへのリックがあります。液状化の情報は「地震リスクマップ」の中にあります。
【図5】滋賀県 液状化危険度分布(全地震最大)(出典: 滋賀県防災マップ)
滋賀県では琵琶湖西岸断層帯地震、花折断層帯地震などの活断層による内陸直下型地震と南海トラフ巨大地震などの海溝型地震のリスクがあり、リスク別に液状化の分布図を見ることができます。いずれの場合も琵琶湖周辺の沖積低地、河川流域の盆地や扇状地に軟弱地盤が多く、液状化の危険度が高くなっています。
「滋賀県防災情報マップ」で住所を入力するとピンポイントで浸水想定区域図、土砂災害指定区域、地震及び液状化危険度図を見ることができます。作図機能を使って自宅付近のマップに必要な情報を記入し、オリジナルのハザードマップを作ることができます。快適で便利、見やすいシステムになっています。
奈良県の液状化マップ
■第2次奈良県地震被害想定調査奈良県では平成16年10月に地震被害想定調査の結果を公表しており、この中に液状化危険度分布図も含まれています。内陸型地震の中で特に被害が大きくなると予測しているのは(1)奈良盆地東縁断層帯、(2)中央構造線断層帯、(3)生駒断層帯で、もし地震が発生した場合は県内で震度7から震度5強の揺れが想定され、盆地内を中心に地盤の悪い地域では液状化発生の可能性は高い、としています。
【図6】奈良県 東南海・南海地震同時発生時の震度分布図(左)と液状化危険度分布図(右)(出典:奈良県第2次奈良県地震被害想定調査)
和歌山県の液状化マップ
■平成26年公表 地震被害想定(平成26年3月)和歌山県では約100年周期で発生すると想定されているM8クラスの「東海・東南海・南海3連動地震」と、千年に一度、1万年に一度と想定されているM9クラスの「南海トラフ巨大地震」の2つの地震被害想定を公表しています。【図7】は南海トラフ巨大地震時に発生する液状化危険度予測図です。
【図7】南海トラフ巨大地震発生時の液状化危険度予測図(出典:和歌山県地震被害想定調査報告書 H26年3月)
南海トラフ巨大地震が発生した場合、最大震度は和歌山市、海南市で震度7、紀美野町、紀の川市、岩出市、橋本市で震度6強と予測しています。液状化の危険度は、揺れが大きく、地下水があり液状化を引き起こす砂層が厚い平野部を中心に高くなっています。また、液状化危険度の予測と同時に、液状化に伴う地盤の変形を予測し、液状化が引き起こす局所的は地盤沈下を予測しています【図8】。
【図8】南海トラフ巨大地震発生時の液状化に伴う局所的な地盤沈下量(出典:和歌山県地震被害想定調査報告書 H26年3月)
以上、今回は大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山の近畿地方1府5県の液状化マップをご紹介いたしました。今回ご紹介した液状化マップはいずれも各府県が独自の調査を踏まえて公表しているデータです。記事中にリンクしている各府県のホームページからより詳しい情報を得ることができますので、ぜひご自宅付近の状況を確認してください。
【参考資料】
大阪府域の人的被害・建物被害想定
(第4回南海トラフ巨大地震災害対策等検討部会資料(平成25年10月30日開催))
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