真実を虐殺する拷問と暗黒裁判
米国占領下にあった日本で実際に起こった、下山事件、三鷹事件と並んで「国鉄三大ミステリー事件」のひとつと言われている「松川事件」を映画化した社会派作品。1949年8月に起こった列車転覆事件の取り調べで別件逮捕され、数々の拷問や脅迫を受ける青年A。耐えきれなくなった彼は、警察や検察側が考えた筋書き通りの虚偽の自白を行い、これがきっかけで20人の労働組合員たちが逮捕されてしまいます。
しかし、1950年に開かれた第1回目の公判でAは無実を主張。様々な無実である証拠が明らかにされたものの、死刑5名、無期懲役5名、他の10名にも有罪の判決が下されてしまいます。
1953年に開かれた第2審の判決も3名を除き全員有罪と言い渡されますが、被告をはじめ多くの支援者たちは最高裁での勝利を誓うのでした。
国家の思惑が絡んだ冤罪事件に巻き込まれた被告たちを救うためのカンパで制作されたのも話題となった本作。それ以上に一級のエンターテインメントに昇華された被告、弁護人、検事が対決する迫真の法廷シーンは、事件に興味の無い層の心にも訴えて大きな反響を得ました。
山本薩夫監督は同じく松川事件をベースにした『にっぽん泥棒物語』(1965年)も撮っています。
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■松川事件
監督:山本薩夫
主演:宇野重吉、宇津井健
DVD発売元:新日本映画社