権力と芸術を狂おしいほどに描いた絢爛絵巻
芥川龍之介の名作『地獄変』を、『夫婦善哉』『雪国』などで知られる文芸映画の巨匠・豊田四郎が監督。1年の準備期間を費やした本作は素晴らしい美術と、海外セールスを意識して使用したパナビジョンの画面比率を最大限に活かした構図が非常に素晴らしいです。舞台は平安時代、権力者・堀川の大殿は天才絵師・良秀に、無量寿院の壁面を極楽図で飾るよう命じます。良秀は「地獄絵図こそこの世にふさわしい」と依頼と正反対のものを仕上げ対立してしまいます。
偶然、良秀の愛娘・良香を目にした大殿は、彼女を気に入り小女房にしてしまいます。良秀は良香を返して欲しいと何度も嘆願。大殿は地獄絵を描くように命じ、出来次第で良香を返すと約束します。
苦しみ抜く民衆の地獄を描き、残すはメインの大殿が焦熱地獄で焼き死ぬ部分のみとなった地獄絵。良秀は真の地獄を見ないと地獄絵が描けないと語ります。それを聞いた大殿は華やかな飾り付けをした牛車を用意し火を放ちます。その中には良香が縛られていました。
中村錦之助の大時代的な演技は異様な迫力を持ち、これぞ大スターというべき貫禄を披露。仲代達矢も渾身の力を込め、狂気の天才絵師・良秀を演じ、両者の演技合戦は作品に上質の緊張感を与えています。
国内未DVD化ながら、海外では『Portrait of Hell』というタイトルでリリース中です。
■地獄変
監督:豊田四郎
主演:中村錦之助・仲代達矢
DVD:未発売