現代のCG技術では再現できない、円谷プロによる特撮技術
■監督
本多 猪四郎(ほんだ いしろう)
■主演
久保明、水野久美、小泉博
■DVD販売元
東宝ビデオ
■あらすじ
ある日豪華ヨットで海に繰り出した七人の若い男女。彼らは暴風雨に遭遇し、遭難した末無人島に漂着した。そこは霧と不気味なキノコに覆われた孤島だった。
密林の奥を抜けようやく反対側の海岸に一隻の難破船が見つかる。しかし生存者はおらず残された航海日誌には「船員が次々消えてゆく」「絶対にキノコを食べてはいけない」との警告が。
やがて残ったわずかな食料を巡り飢餓に苦しむ皆に対立と不和が生じる。さらに追い討ちをかける様に島の奥から見るも恐ろしげなキノコの怪物・マタンゴの集団が出没し始める。
極限状態の中、一人また一人と禁断のキノコに手を伸ばしてしまう。
彼らの運命やいかに……。
■お勧めの理由
本作は、ゴジラをはじめとして50、60年代に数々の東宝特撮映画で名を馳せた本多監督による作品です。ホラーというよりむしろ怪奇映画といった方がしっくりくるテイストで、東宝特撮としては数少ない大人向けの味わい深い寓話です。
作品の魅力の一つに世界的にも独自の発展を遂げ60年代には円熟期に入っていた円谷英二(つぶらやえいじ)氏率いる円谷プロによる特撮技術があります。
現在のCG技術では再現できない独特の質感、色使いは圧巻で、本作においては島内のおどろおどろしさ、マタンゴの毒々しさを表現するのに遺憾なく発揮されています。
またこの作品は後のゾンビ映画に見られるような、異形の怪物達が集団で突然人間に襲いかかってくるタイプの作品としてはしりの1本です。
この様な作品は共通の特徴があって、多くの場合怪物は自然破壊や環境汚染等のメタファーです。つまり人間の行き過ぎた行為が報いとなって人に牙をむくことへの戒めを表現しています。
そして本作も洋上の孤島が舞台になっていることから分かるように、背景には核保有国のそのような地における水爆実験、及び環境への影響に対する批判があります。
ただ本作はそこから、その様な行為に人を向かわしめるエゴ(島内での自分だけでも生き残るための醜い争いに象徴)にまでもう1歩踏み込んだ点が作品に深みと奥行きを与えました。
結果今も多くの根強いファンに支持される名作として評価されるお勧めの作品です。