「男はつらいよ」シリーズの寅さんの原点ともいえるキャラクター
■監督山田洋次
■主演
ハナ肇、有島一郎
■DVD発売元
松竹
■おすすめの理由
無気力な日々を送る市役所衛生局の課長・早乙女(有島一郎)と自由気ままに生きる労務者の源さん(ハナ肇)。対照的な2人の奇妙な友情を描いた山田洋次監督の風刺の利いた人情喜劇です。
風来坊の源さんは「男はつらいよ」シリーズの車寅次郎の原点ともいえるキャラクター。「馬鹿」シリーズ同様、一見豪快に見えるが実は純情で繊細というハナ肇の個性が生かされています。
平穏な郊外の中流家庭に、ひょんなことから紛れ込んだ乱入者が巻き起こす騒動が面白おかしく描かれます。ところが源さんがある事件を起こしたばかりに……。
最初は好奇心から彼を珍重するものの、何かまずいことが起きると一転、すべてを彼のせいにしてスケープゴートとして葬ってしまう。そんな中流意識故の差別や嫌らしさが浮き彫りになります。
そこがこの映画が他の喜劇とは一線を画する点で、これはティム・バートン監督の『シザーハンズ』(90)にもつながるテーマです。
ただこの映画は、それだけでは終わらず、涙と笑いが同時に込み上げてくるような素晴らしいラストシーンが用意されています。これも、最後は必ず明るく終わる「男はつらいよ」シリーズに通じるものです。
早乙女と源さんは「燦めく星座」をよく一緒に歌いますが、「男純情の~」という歌詞が2人の心情を見事に代弁しています。
実は山田洋次は流行歌の使い方がとてもうまいのです。