わたしたちの日常とかけ離れた日常を追った作品
『チチカット・フォーリーズ』
■監督フレデリック・ワイズマン
■主演
ドキュメンタリー映画のため、なし?
米マサチューセッツ州にある精神異常犯罪者のための収容所の日常を追ったドキュメンタリー映画。
フレデリック・ワイズマンという監督の特徴でもあるのですが、特に何も起きず、そこにある日常が、淡々と追われているだけの映画です。
しかしそこで行われている日常は、わたしたちの日常と、なんとかけ離れていることか。
一昔前の「精神異常者」のイメージそのものの人たちが、この映画には収められています。
ひとりごとを呟き続ける人、ただただ叫びまくる人、陰謀論をとなえる人などなど。
そしてこの映画は、収容所の日常を撮った映画である以上、彼らを管理する側も捉えています。
つまり、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者たちが、収容者たちをどのように扱っているかも、
この映画の中にはあるのです。
真に発狂した人間の言動は、あまりにもショッキングではありますが、それを管理する側の、
彼らを扱う態度にも驚かされます。
ただ、この映画は、「良いか悪いか」を教えてくれる映画ではありません。
ただ、彼ら日常が記録されているだけです。観客に判断を迫る映画です。
本作はアメリカ合衆国が唯一、一般上映を禁じた映画であり、長年に渡る裁判を経て、一般公開されたのは1991年でした。なぜこれをアメリカは国民に見せることを禁じたのか。いろいろ考えずに入られない作品です。
ただ記録し、編集し、見せる。それがあれば映画に、それも凄まじい映画になる、
ということを教えてくれる、大変な傑作です。