ミュージカル映画の巨匠ロバート・ワイズ監督によるホラー映画
■作品名たたり(The Haunting)
■監督
ロバート・ワイズ
■主演
リチャード・ジョンソン ジュリー・ハリス クレア・ブルーム
■DVD販売元
ワーナーホームビデオ
■あらすじ
ニューイングランドの人里離れた地区に数々の忌まわしい過去を持ち人の住み着かぬ館(通称丘の家)があった。高名な心霊研究家・マークウェイ教授は、少女時代に不思議な体験を持つエレナと超感覚的な能力を持つセオドーラを助手として館の調査に着手する。
調査初日の夜、館に宿る邪悪なものがうごめき始める。それをいち早く感じ取ったエレナだったが、やがて怪異に魅入られてゆき、そして……。
■おすすめの理由
本作は『ウエスト・サイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』『スタートレック』などで有名な巨匠
ロバート・ワイズ監督によるいわゆる“館(家)モノ”のホラーです。
1960年代のハリウッド映画におけるホラーは、ハマーやAIP社のいわゆるB級ゴシックホラー(エドガー・アラン・ポー原作等の古典的ホラー)全盛期でした。
この作品もその流れに属するかに思えますが、ずっと写実的で系譜的にはゴシックと70年代のオカルト(エクソシスト、オーメン等)の中間に位置しています。
手法的には同年代のヒッチコック的な心理スリラーに近いものがあります。
そして本作の魅力はズバリ恐怖の描き方にあります。実は作品全体を通じて悪霊の様なものは全く現れません。ただ全編に亘って、カメラワーク、構図等の映像、効果音等の音声、ストーリー展開等の演出面、そして不自然な現象の痕跡等の描写を際立たせることで観客の心理的な恐怖心を巧みに引き出します。
これは即物的な恐怖描写がほとんどを占めるハリウッド的ホラーではかなりマイナーですが
日本人的にはどこかしっくりくる面があって興味深い所ですしまたハリウッドの奥深さも窺えます。
またワイズ監督のオールマイティな才能にも感嘆します。ミュージカルやSFの大家として知られる
彼の原点がB級ホラーであり、いつしか感性がSF的そして哲学的な方向に向かったのは楳図かずおさんと通底していると思います。
今改めて観直すと見えざる恐怖は冷戦期の核戦争への恐怖心理なんかが根底にある様に感じましたが、難しいことは考えなくても上質の恐怖心理を与えてくれる佳作ですのでお勧めします。