著書による宣伝効果
本の出版というのは専門家にとってはひとつのステータスです。いつか本を出版したいと思っていた私は、開業一年目にして目標を達成してしまいました。書店に並ぶ自分の本を見て、満足感に浸っている自分がいました。それから半年も経たないうちに仕事に大きな変化がもたらされます。会社設立の仕事が舞い込むようになりました。会社設立の本を出版したことで、世間から「会社設立の専門家」としての認知されたのです。世間は起業ブームということもあり、順調に会社設立の依頼が増えていきました。
ちょっと専門的な話になりますが、会社設立手続は準則主義と言って、必要書類が整っていれば会社設立が認められます。帰化申請や風営法許可などの難しい許認可と異なり、失敗が少ないのです。新人にとってはありがたい仕事でした。
また、当時の会社設立の報酬の相場は10万円前後でした。最大限に事務効率を上げて無駄を省いていけば、仕事完了に10時間はかかりません。時給換算すれば1万円前後です。報酬的にも恵まれた仕事でした。
会社設立という仕事は事務所開業のスタートダッシュとしては申し分のない仕事でした。私は「離婚」と「会社設立」という、二つの業務の柱を立てることができたのです。開業間もない新人行政書士としては順調と言えると思います。
再び試練が……
多少時間の前後はあるのですが、そのころ身内の闘病看護が無事終わりました。そこで、時間余裕ができたのです。さあ、今度は何をやろうと思っていた私に再び試練が訪れました。新たな広告に挑戦させられることになるのです。そう、「挑戦させられた」のです。「働く」とは「人が動く」と書く。「労働は動いてなんぼだ」と。文字から説教をする、そんな金八先生のような手法で、パソコンにしがみついて仕事をする私を痛烈に批判するキーパーソンが現れます。
自分一人で自由に仕事をする「自由業」の私にとって試練が訪れます。