住宅購入の費用・税金/住宅ローンのしくみと選び方

金利決定は「資金実行時」 金利変動に一喜一憂するな

日本銀行による大胆な金融緩和の副作用なのか、足元、長期金利が乱高下しています。この影響は住宅ローン金利にも伝播しており、これまで下落基調を強めていたローン金利が、5月には利上げへと転じる場面がありました。これから住宅ローンを借りようとする人は、「借入金利の決定時期」を意識した資金計画の立案が求められます。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


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アベノミクスの副作用なのか、足元、長期金利が乱高下している。

5月20日、内閣府から5月の月例経済報告が公表され、景気の基調判断が4月の「このところ、持ち直しの動きがみられる」から「緩やかに持ち直している」へと2カ月ぶりに上方修正されました。今年(2013年)1月~3月期の実質GDP成長率が年率換算でプラス3.5%という高い伸びを示したように、景気の先行きは次第に回復へ向かうことが期待されています。

この背景にあるのがデフレマインドの改善です。雇用情勢は依然として厳しさが残るものの、企業の景況判断は改善の動きがみられ、個人消費も持ち直しています。「いずれ景気は良くなるだろう」という回復を先取りした期待先行ではありますが、2013年度一般会計予算(約92.6兆円)もようやく成立し、デフレ脱却への確度を高めることが予想されます。

しかし、すべてが順調ではありません。気がかりな面もあります。下記グラフは今年2月からの長期金利の推移ですが、4月初旬に史上最低の0.3%台まで下落したかと思うと、一転、5月15日には一時0.92%まで急上昇。激しく変動しているのが見て取れます。長期金利の動きが不安定化しているのです(下グラフ参照)。
長期金利の推移

 

4月に日本銀行が、年間約50兆円のペースで長期国債の保有残高が増加するよう国債の買い入れを強化したことで、国債市場では流動性や安全資産としての価値が低下するのではという懸念が台頭し、一部で混乱が生じています。今が国債の「売りどき」なのか「買いどき」なのか債券ディーラーの間でも意見が交錯し、長期金利の乱高下を引き起こしています。

住宅ローン金利は物件の「引き渡し時」の金利が適用  申し込み時ではない 

こうした混乱は住宅ローン金利にも伝播しており、これまで下落基調を強めていた住宅ローン金利が5月には利上げ方向へとトレンド修正されました。上げ幅はわずか0.1%ですが、金利トレンドに変化が見られた点は特筆に値します。金利の先高観が台頭し始めた証左といえます。

その結果、住宅ローン利用者の金利タイプの選択行動にも変化が見られるようになりました。これまで過半数を占めていた変動型の金利タイプ利用者が年明け以降、40%台へとシェアを縮小させました。アベノミクスの副作用(=金利上昇)を背景に、固定タイプの人気が高まっています(下表参照)。
金利タイプ別の利用者割合の推移

 

金利タイプを選ぶ際の基本的な考え方は以下の通りです。

 ○金利の「上昇局面」では固定金利タイプを中心に選ぶ  
 ○金利の「下降局面」では変動金利タイプを中心に選ぶ

金利上昇リスクの台頭により、多くの住宅ローン利用者が固定金利タイプを中心に選び始めています。上述の基本原則に従い、リスク回避に向けた動きを顕在化させています。

ただ、思い出してほしいことがあります。それは、借入金利の決定時期です。たとえば1年以上、財形貯蓄をしている会社員や公務員の人が利用できる財形住宅融資は、融資の申し込みをした時点の金利が適用されます。市場金利の動向を注視しながら、「今が金利のボトム」というタイミングに合わせて自己判断で借入金利を確定できます。

これに対し、フラット35や民間金融機関の直接融資は、いずれも資金実行時(引き渡し時)の金利が適用されます。「今が金利のボトム」と思い、融資の申し込みをしても、取得した住宅の引き渡し時期に市場金利が上昇してしまえば、上昇後の借入金利で住宅ローンを組まなければなりません。融資の申し込み時点では借入金利を確定できないのです。

このことから分かるように、金利のボトム圏での借り入れを望むなら、購入した住宅の「引き渡し時点」での市場金利を予測しなければなりません。引き渡し時期が3カ月先や6カ月先ならまだしも、1年以上先ともなれば予測は困難を極めます。最低金利で借りられるかどうかは、神のみぞ知るわけです。

つまり、目先の金利上昇に過剰反応するべきではないのです。絶えず、市場金利は上下変動しています。「金利決定は資金実行時」という基本原則を思い出し、金利変動に一喜一憂しない冷静な判断力が住宅ローンの「勝者」には求められます。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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