管理職の残業代はどうなってる?
管理職になったとたん、残業代がなくなり収入が減ったという話をよく聞きます。本当に管理職は残業代が支払われないのでしょうか?●目次
労働基準法の「管理監督者」は残業代なし
ポイント1. 経営者と一体的な立場で重要な職務
ポイント2. 重要な責任と権限
ポイント3. 勤務時間も自由裁量
ポイント4. 賃金は相応の待遇
「管理監督者」と労働組合の「監督的地位にある労働者」は違う
飲食店店長は管理監督者と見なされる?
金融機関での管理監督者の範囲は?
深夜割増賃金は管理監督者にも支給
労働基準法の「管理監督者」は残業代なし
労働者の労働条件などを定めている法律「労働基準法」では、「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と定められています。これが残業代ということですね。ただし、例外が定められており、「管理監督者(監督若しくは管理の地位にある者)」は残業代を支払わなくてよいことになっています。管理職になると、この管理監督者に該当するので残業代が支払われないと思われますが、実は管理職と管理監督者は全く違うものです。では、管理監督者はどういう人のことなのでしょうか? 管理監督者と判断される4つのポイントをご紹介します。
ポイント1. 経営者と一体的な立場で重要な職務
管理監督者とは経営者と一体的な立場にある人で、重要な職務を担います。このような仕事は、労働時間などの規制の枠を超えて活動せざるを得ないと判断されます。経営者と同等な立場となると、会社の中でもかなり限られたトップ層です。一般的な管理職像からは少しかけ離れているといえます。
ポイント2. 重要な責任と権限
次に、管理監督者は経営者から重要な責任と権限が委ねられている必要があります。自らの裁量で行使できる権限が少なかったり、上司に決裁を仰がないといけなかったり、上司の命令を部下に伝達するだけの管理職は該当しません。
ポイント3. 勤務時間も自由裁量
勤務時間についても厳格な規制を受けずに、自分で決めることができるかもポイントです。タイムカードで勤務時間を管理され早退や遅刻で減給になったり、決められた時間は出勤しないといけなかったりする場合は管理監督者となりません。
ポイント4. 賃金は相応の待遇
管理監督者は責務が重要であることから、給与やボーナスなどは優遇されていなくてはいけません。役職手当などの待遇が十分であるかも問われます。管理職になって給料が減るようでは、管理監督者とはいえませんね。
「管理監督者」と労働組合の「監督的地位にある労働者」は違う
管理職になったために労働組合から脱退することがあります。これは労働組合法の「管理的地位にある労働者」で、労働基準法の「管理監督者」とは別のものです。 労働組合の組合員でなくなったから、残業代がなくなるというのも間違った解釈ですので、注意しましょう。飲食店店長は管理監督者と見なされる?
管理監督者にあたるかどうかは総合的に判断されます。そこで、裁判で争われた判例をご紹介しましょう。「レストランビュッフェ事件(大阪地裁判決 昭和61年7月30日)」では、ファミリーレストランの店長が管理監督者ではないと判断されました。その理由は、
- 店長としてコック、ウェイター等の従業員を統括し、採用にも一部関与し、店長手当の支給を受けていたが、従業員の労働条件は経営者が決定していた
- 店舗の営業時間に拘束され、出退勤の自由はなかった
- 店長の職務の他にコック、ウェイター、レジ、掃除等全般に及んでいた
金融機関での管理監督者の範囲は?
都市銀行などでは管理監督者の範囲として、以下のように示されています。- 取締役等役員を兼務する者
- 支店長、事務所長等事業場の長
- 本部の部長等で経営者に直属する組織の長
- 本部の課又はこれに準ずる組織の長
- 1~4と同格以上に位置付けられているもの
これらを見ても、管理監督者は管理職の中でも上位に位置づけられる一部の人なのがわかります。
深夜割増賃金は管理監督者にも支給
管理監督者になると残業代が支払われないことになりますが、深夜割増賃金は支払う必要があります。一般労働者と同様に、深夜業(22時から翌日5時まで)の規定は適用されるということですね。いかがでしたか? 管理職になると残業代が支給されないということはありません。単純に役職名ではなく、職務内容や責任と権限、勤務態様等の実態で判断されるので、しっかりとチェックをしておきましょう。
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