広島の名店「ル ジャルダン グルマン」
海の幸に恵まれた広島
広島が、同じく海に臨む街である大阪や神戸と決定的に違うのは、港で海に向かって立った時、眼前に散らばるその島影です。その昔、村上水軍が海賊王のように行き来した海とその島影に、京都や大阪では味わえないノスタルジックな旅情を掻き立てられて、新幹線ではわずか1時間余りの道程を、時折出かけることになります。
道なりに歩いていくと、この建物が見えてきます
その広島の玄関口たる広島駅から山陽本線と広電を乗り継いで、西に向かうと「古江」という駅があります。今回訪問したのは古江駅の北の山手に広がる閑静な住宅街の中腹に鎮座する一軒家フレンチレストラン「
ル ジャルダン グルマン(Le Jardin Gourmand)」。
古江駅からなだらかな坂道を歩くこと数分、突然広々とした果樹園が拡がり、その向こうにヨーロッパのシャレーかと見まがう赤茶色の壁に店名が大きく書かれた一軒家が現れます。
「ル ジャルダン グルマン」の外観
シェフの小山賢一さんは1986年に渡欧後、ジュネーブのレストランを皮切りに、フランスのアヌシーの名店「オーベルジュ ド レリダン(Auberge de l'Eridan)」、パリの南東150kmにあるオーセール(auxerre)の「ル ジャルダン グルマン」で修行を重ね、パリ16区のシャトーホテル「サン ジェームスクラブ」(現サン・ジェームス・パリ)でも腕を揮われ、帰国後1990年に、思い入れのある修行先の名前を冠したご自身の店「ル ジャルダン グルマン(「食いしん坊の庭」といった意味)」を故郷の広島で開店されました。
1993年と2003年の移転の後、2009年4月からイチジク畑や自家菜園も備えた現在の地「古江」に移転され、計20年以上に渡って広島のフレンチシーンを牽引して来られたグランシェフなのです。
窓から見える緑の庭には小鳥もやって来ます
アイアンワークのアーチの門扉をくぐり、お年寄りにも優しい手摺りのあるアプローチを登っていくと、また立派な門があり、そこから花が咲き乱れる階段を少し登ったところが玄関です。玄関を入った正面には塗り壁の上に秘密のウェイティング・スペース。いきなりシェフの遊び心を見せていただいたようで、期待が膨らみます。樫の木のフローリングを踏みしめて右手に進むと、そこからが明るく広々としたダイニング・スペース。手前の部屋にはテーブル席、さらに奥の部屋にもテーブル席が十分な席間で配置されています。真っ白な塗り壁に黒い革張りの椅子が引き立ち、天井にはファンがゆっくりと廻り、はめ殺しの窓に寄ってくる小鳥たちと緑溢れる景色は一幅の絵のようです。
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