先生の治療方針を教えてください。そして、特に35歳以上の方の治療についてどのようにお考えなのかを教えてください。
最初は、問診が大切だと思います。特に、年齢と不妊期間、今までの治療歴、過去に妊娠されたことがあるかどうか、月経異常の有無などが重要な情報と考えます。その上で、卵管通過性、卵巣予備能力、精液所見、子宮内膜症や子宮筋腫などの有無を診察で確認し、なにが原因となっているのかを調べます。原因が明らかな場合は、それに対する治療を重点的に行います。中待合室です。シルエットが美しいです。
特に、私は生殖内分泌が専門ですから、早発閉経を含めて、広義の排卵障害に対する排卵誘発法には、さまざまな治療オプションを持っています。それ以外にも、IVFなんばクリニックに勤務していたときに、何十例と経験を積んだ卵管鏡下卵管形成術も自信があります。両側の卵管が閉塞していた方が、卵管鏡下卵管形成術後に妊娠されたときは非常にうれしかったですね。
最終的には、排卵誘発を併用した人工授精を数周期試行し、これで妊娠に至らなければ、いよいよ体外受精へとステップアップしていきます。若輩者ながら、私は日本生殖医学会など大きな学会のシンポジウムやランチョンセミナーで、体外受精のための排卵誘発をテーマとした講演をさせて頂くことが多いのですが、じつは一般不妊治療も人一倍精力的に行っています。
トイレです。
中には、高度生殖医療だけに特化されている有名な先生方もおられますが、私はこれからも最初からの検査・治療を含めて、患者様方との信頼関係を深めていきたいですね。そして、できれば体外受精に至る前に妊娠していただきたいと考えています。
そうはいっても、35歳以上の方の場合には、スピード感が重要だと考えています。なぜなら、妊娠ではなく出産をゴールに見据えると、そのチャンスは加速度的に減少していくからです。年齢があがると、単に妊娠率の低下だけではなく、流産率も見過ごすことができないほど年々上昇していくのです。あまりお伝えしたくないのですが、40歳代になると胚移植あたりの妊娠率は10%台まで低下し、流産率は30%以上まで上昇してきます。
今さかんに言われている「卵子の老化」は、(原始)卵胞数の減少よりむしろ、卵子の質の低下の方が問題だと思います。30歳代ならまだなんとかなるケースが圧倒的に多いので、対話を最重要視しながらも、常にスピード感をもって治療に臨むようにしています。
新しくクリニックを作られるにあたり、他のクリニックとの差別化をどのように図るかを考えられたかと思いますが、他と違う部分はどこだと思われますか?
さきほどのクリニックへのこだわりにも重なってくるのですが、いくつかまとめてみました。1)培養室の高いクリーン度
2)治療の可視化(培養室の様子を室内カメラで撮影し、待合室で供覧可能)
3)プライバシーへの配慮(リカバリールームが完全個室、患者様をお呼びするときはモニター表示と携帯メールでの連絡:PHSでのお呼び出しは、話している内容が他の方にも聞こえるので極力避けます)
4)体外受精の費用は、自然周期か卵巣刺激周期かによる区別はせず、あくまでも結果による費用設定(採卵数、正常受精数、胚凍結数による加算方式)
5)SEET法(当クリニックの胚培養士が英ウィメンズクリニックで研修してきました)
6)高度な排卵誘発法(私の最も得意とする分野です)
7)綿密なプロトコール作成(注射剤の適切な選択から、血中のホルモン値で新鮮胚移植をするかどうかも判断します)
8)快適な空間(心斎橋の洗練された風景と、細部までこだわったインテリア、そしてカフェに流れるようなBGMと、アロマの香り)
9)桑実胚Gradingと桑実胚移植(最近、ヨーロッパでも脚光をあびてます)
10)NBM(我々の原点です)
最後に、ホスピタリティにあふれたスタッフが一番の自慢です。開院前よりコーチングについても講習を重ね、コミュニケーションについても重視した教育を徹底しています。
IVF大阪クリニックとしては副院長である春木先生が抜けられるのは痛手だと思いますが、引き止めやトラブルなく開業になられたのでしょうか?
IVF JAPANの皆様はとても信頼できる仲間でした。そして何より、私よりも優秀なドクターが山ほどいますので、開業に際してトラブルは全くなかったと思います。特に、森本理事長、福田院長は、日本の生殖医療を牽引する最も有名なドクターで、私も多くのことを教わりました。カウンセリングルームです。
最近、テレビでもIVF大阪クリニックで妊娠された患者さんの特集がされていて、福田先生も出演されていました。それこそ、お二人がどれほどの奇跡をもたらしてきたかは、私が一番よく知っています。たまたま、IVF大阪クリニックが移転し、リニューアルオープンのときに、副院長に就任することができて本当によかったと思っています。
私が開業するにあたっては、森本先生、福田先生とも応援して頂けるとのお言葉を頂いていますし、お二人ともお忙しい中、内覧会にご来場いただいて、とても感激いたしました。
不妊治療の最後の砦として、これからも連携して頂ければ思っています。
大阪は不妊専門クリニックの多いところですが、あえて大阪にしようと思ったのはなぜですか?
答えは3つあります。まず私が育った地であること。そして、今でも私を頼りにして、治療を継続されている患者様が多いこと。最後は、不妊治療を通じて大阪を元気にしていきたいということです。大阪には優秀な不妊専門クリニックが多いことも、自分にとってはむしろ励みになっています。春木レディースクリニックのロゴマークです。
私が以前勤務していたIVF JAPANは、統合医療分野に関しては世界一だと思います。なかなか妊娠に至らない患者様でも、統合医療の神秘的な力で、奇跡の妊娠をもたらす手法は、我々凡人にはとても真似できる代物ではありません。IVF JAPANは、不妊治療を受けられる方の最後の砦であることは、今でも変わっていないと思います。
そして、西日本では最大の治療周期数を誇る神戸三宮の英ウィメンズクリニックの塩谷院長には、胚培養の方法や、SEET法、診療システムについて、今もいろいろご指導を頂いております。
そして、この夏にグランフロント大阪で開業される石川智基先生とも、とても仲良くさせて頂いています。石川先生は、精巣内精子回収術(TESE)では、いまや日本の第一人者であり、ともに開業した後は、お互いに協力しあいながら、大阪の生殖医療を盛り上げていこうと話しています。このお二人との連携が可能であることも大阪で開業することを決めた大きな理由となっています。
最後に、読者の方にこれだけは伝えておきたいということはございますか?
まず、私は「もしかしてわたし、不妊症?」という方々にとって、最初の砦になりたいと考えています。クリニックの理念にもあるように、エビデンスを駆使しながら、お二人の考えをコーディネートして、できるだけ早く妊娠・出産という結果につなげていきたいと考えています。地下鉄心斎橋駅から直結しています!
私はつねづね、クリニックに来院される皆様を、「妊娠まで少しだけ時間が必要な方々」と考えて日々診療をしています。もちろん、必要とされる時間が短い方もいれば、長い方がいるのも事実ですし、その時間の中には、乗り越えなければならない困難があるかもしれません。
でも、多くの方がその困難を乗り越え、数多くの奇跡を体験されてきました。
その喜びは、ご夫婦やご家族だけではなく、ご友人や私たち治療を提供する立場のものまで、元気にしてくれます。もしも今、「私たちは妊娠までもう少しだけ時間が必要かもしれない」と考えられている方がいらっしゃれば、お気軽に春木レディースクリニックまでお越しください。
そして、もし皆さまのご希望を達成するまでのとても貴重な時間を共有させて頂けるのであれば、これほど光栄なことは、どうか一緒に力を合わせてがんばっていきましょう。
取材後記
男の私が言うのもなんですが、春木先生と話していると、安心感と共にとても爽やかな印象があります。たぶんこの雰囲気に共感される患者さんは多いと思います。「エビデンスはもちろんきちんとチェックし、その上で一人一人の治療を大事にする」。言葉では簡単ですが、なかなか実践が難しい事にチャレンジされているのも特筆すべき点だと思います。オーダーメイドを具現化することにより、患者さんにとって最適で唯一の存在になりうることを目標にしているクリニックはありそうでなかなかありません。
患者さんにとって、力強い味方となることは間違いないでしょう。
私は不妊治療分野において日本で最も競争の激しい大阪地区の台風の目になるのではないかと思っております。これからも目の離せないクリニックであることは言うまでもありません。今後も追っていきたいと思っております。
最後に忙しい時にも関わらず、取材に応じて頂きました春木院長先生に厚く御礼申し上げます。
■春木レディースクリニック