演歌・歌謡曲/グループサウンズ・ニューロック

ザ・リンド&リンダース 堀こうじインタビュー 前編

2007年の加賀テツヤ急死以来、活動停止状態にあったグループサウンズ『ザ・リンド&リンダース』が今また再び動きを見せようとしている。今回は2013年4月に加賀テツヤ7回忌について打ち合わせをするかたわら行ったインタビューから、主に堀こうじとの会話を抜粋した。グループサウンズブーム当時の暮らしぶり、音楽シーンの移り変わり、現在の活動について貴重な証言を得ることができた。

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド

はじめに

2013年4月4日、関西を代表するグループサウンズのスターだった加賀テツヤの7回忌について打ち合わせをするためリンド&リンダースのメンバーである宇野山和夫さん(ベース)、堀こうじさん(サイドギター)、パープルシャドウズ、ジュテーム、SLOGなどグループサウンズに縁深いバンドでキャリアをもつ剣正人さん、加賀テツヤと親交のあったグループサウンズ研究家のDAIさん、そして当コーナーガイドの中将タカノリが集結した。
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左から中将タカノリ、堀こうじさん、DAIさん、宇野山和夫さん、剣正人さん


場所は宇野山さんが経営する人気餃子店『味奉行』。

2007年の加賀テツヤ死去以来、目立った動きの無かったリンド&リンダースだったが、今回の席上でファンの拠り所となるような公式ホームページの開設、再始動の可能性などについて前向きな話し合いがおこなわれた。また、これまで公式な記録やインタビューが極端に少なかったリンド&リンダースの実態を、可能な限り正確に後世に伝える必要性についても話は及んだ。

今回のインタビューは、まさにその一環として記録されたものである。メインの語り手は堀こうじさん。60年代当時の音楽シーン、バンドマンの生活、リンド&リンダースの売り出し戦力などについて貴重な証言を得ることができた。

最近、不幸ごとでしかお会いできてませんが……リンド加入のいきさつ

ガイド:お久しぶりです。桑名正博さんのお通夜ぶりですね。最近、追悼イベントとか不幸ごとでしかお会いできてなくてアレですが……今回も加賀テツヤさんの七回忌の打合せやけど……とにかくよろしくお願いします。今日はリンド当時についていろいろ伺いたいと思っております。いきなりですが、堀さんがリンド&リンダースに加入したのは何がきっかけだったんですか?

掘:僕の姉が毎日放送のラジオ制作部に知り合いがおって、リンドがギター募集してることを知ったんやね。面接行ったら加藤さん、宇野山さん、坂本スミ子さんとかおったけど、ギターの腕とか関係なしや。見た目だけでオッケーで「明日から来なさい」。

宇野山:ほんと見た目だけ。ギターの腕はとんでもなかった(笑)。

掘:見た目だけの世界やってんな。宇野山さんにはいじめられたりシゴかれたりしたけど、加藤さんはあんまりどうやこうや言う人じゃなかった。出来なかったらそれでいい。僕にも「テレビカメラに向かってニコッとしてるだけでいいから」みたいな感じだった。

ガイド:高木和来さん、迎修二さん、島明男さんが辞めた後に堀さんや藤丸さんが入ったんでしたね。たしかに堀さんは男前やし、藤丸さんもオシャレで可愛らしい感じです。

宇野山:掘たちが入ってしばらくして俺が辞めて、代わりに毛利アキが入ったんや。毛利もすごいヘタやったけど、事務所としては「これで揃った」と思ったんちゃうかな。俺はビジュアル系ちゃうくて7・3分けで頑固で社長の言うことも聞かへん変な男やったから。

掘:当時のシロート的な僕でも「なんで毛利のベースで音楽せなあかんねん。」って思ったよ。もう一人、途中で加藤さんが名古屋かどこかでキーボードのコひろってきたことがあったなぁ。気もなにもかも細いコで、ルックスは良かったけど半月かそこらでイジメにたえきれずにおらんくなってしもた(笑)。残念かな、宇野山さんが辞めたくらいからGSブームもグワーッと絶頂期に入ったように記憶してるね。それまではまだロカビリー系のほうが強かったんちゃうかな?

ガイド:GSはルックス重視の面が強かったってことなんですかねぇ……。

宇野山:そうやな。リンドも実力派バンドとは言われてたけど実質は加藤さんと僕、二人の職業ミュージシャンが支えてたんやな。他のメンバーはみんなアマチュアバンドからすぐにスターになった人たちやから。スターになったら忙しくて練習する時間なんかそうそう取れないよ。加藤さんとか僕はスターになる以前に「音楽でメシ食べたい」って必死で勉強してたから、違って当然。

混沌とした60年代バンドシーン

ガイド:堀さんはリンド&リンダースに入るまではどんな活動されてたんですか? 大阪のアマチュアシーンはどんな状態だったんでしょう?
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60代半ばを超えても独特の男前オーラをもつ堀こうじさん


掘:今みたいにお金払ってライブするようなアマチュアバンドはあんまりおらんかったんちゃうかな? みんな給料もらってそれぞれのハコと契約してた。当時の大阪ではバンドマンの仕事を仕切ってる人が二人いてね。一人はドラマーのオオムラさん。もう一人がベースのマツナガシンタロウさん。僕はリンドに入るまではオオムラさん派におってちょこちょこギター弾いてた。宇野山さんはどっち派やった?

宇野山:俺はどちらにも入ってない。ああいう人種とは……でもどちらかというとオオムラさん派と言えるんかな。ハリケーンに入る前、スチールギターでオオムラさんのバンドにひろわれたことがあってん。港区のストリップ劇場の上にディスコが出来て、そこに入るバンドのメンバーとしてね。でもすぐにベースが抜けてしまって「宇野山が代わりにベース弾け」って言われたから俺も三日で辞めてしまったけど。

あと、シンタロウはマイナーのミュージシャンを食い物にしてた商売人。いわゆるヨゴレの人。いろんな所に顔出して仕事とってくるのが上手かった。マネージャーみたいな感じでバンドとキャバレーやサパークラブを仲介して、ピンハネしてた。

ガイド:歴史に残らない音楽シーンの裏の部分ですね。

掘:そうゆう世界におって、そんで19歳の時にさっき言った姉経由の紹介でリンドに入ったんやね。面接行く前にオオムラさんに「リンドの面接行っていいですか?」って相談したら「あかん! リンドだけは絶対あかん! あんなバンド入ったら付き合いせんぞ。」って言われた(笑)。

宇野山:メジャー志向とマイナー志向でぜんぜん違ったからなぁ。「あいつら下手やのになんでテレビ出てるねん。」とかやっかみもあったんちゃうかな?

掘:最終的には「あこ入ったらメジャーになれるし、またとないチャンスやから勉強のつもりでやってみなさい。お前やったらマジメやから悪い誘いにも乗らずにふんばれるやろうし。」って言ってくれたけどね。

後編につづく

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