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愛川ゆず季の2年半の功績と女子プロレスの今後

4月29日、両国国技館においてグラビア・アイドルでありながら女子プロレスラーとして活躍した愛川ゆず季が引退しました。わずか2年半の現役生活でしたが、グラレスラーという独自のポジションを確立し、2011年&12年の2年連続で女子プロレス大賞を獲得するなどの大活躍でした。改めて愛川が女子プロレス界に残した功績とは、そしてヒロインを失った今後の女子プロレス界は。

小佐野 景浩

執筆者:小佐野 景浩

プロレスガイド

グラドル+プロレスラー=グラレスラーを確立

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4月29日に引退した愛川ゆず季

女子プロレスといえば70年のジャッキー佐藤&マキ上田のビューティ・ペア、80年代の長与千種&ライオネス飛鳥のクラッシュ・ギャルズに少女たちが熱狂、90年代になると男子プロレスファンが女子プロにも注目するようになって94年11月20日には遂に東京ドーム進出を果たしましたが、老舗の全日本女子プロレスが05年3月31日に解散してからは、コアなファンに支えられつつも黄金時代ははるか昔の話になってしまいました。そこに救世主のように登場したのがグラビア・アイドルの愛川ゆず季でした。

2010年8月にプロレス・デビューを表明した愛川は「グラドルにプロレスができるのか?」と批判的な目を向けられましたが、同年10月31日のデビュー戦ではレスラーとして肉体改造し、韓国武道テコンドーの経験(青帯)を活かした打撃技で元WWWWA世界シングル王者の高橋奈苗に善戦。高橋、関係者、ファン、マスコミを驚かせました。そして翌11年1月に高橋をエースに旗揚げした団体スターダムに所属。“ゆずポン”の愛称でテコンドー仕込みの7種類のゆずポンキックを武器に看板レスラーになったのです。

愛川のセンスの良さはグラビア・アイドルというもうひとつの顔をプロレスに取り入れたこと。入場テーマ曲はかつて出演したDVD作品『爆乳戦隊パイレンジャー』のテーマ、100センチ、Hカップのバストを利したパイパイ・アタックなるオリジナル技も考案しました。また試合中にグラドル・ポーズ、試合後もリングに寝そべってカメラマンに向かってグラドル・ポーズ……と、グラドル+プロレスラー=グラレスラーという独自のポジションを確立したのです。グラレスラーが成立したのは愛川のプロレスに対する真摯な取り組みと、明るく健康的なキャラクターがあってこそでしょう。

ゆずポン人気は男子プロレスにも波及して様々な男子団体に招かれ、さらに佐藤江梨子主演、愛川らスターダムの選手が出演する女子プロを題材にした『ここが噂のエルパラシオ』というドラマが11年10月~12月にテレビ東京で放映されました。一躍、女子プロレスのアイコンとなった愛川は、11年&12年の女子プロレス大賞に選ばれています。

グラドル時代に独自の視点でプロレスを解説

私はCS放送のGAORAスポーツで全日本プロレス中継のテレビ解説を努めていますが、愛川が08年4月7日の後楽園ホールにゲスト解説者として来てくれたことがありました。まだプロレス・デビューを発表する2年4ヵ月前のバリバリのグラドル時代です。

「プロレスをナマで観るのは初めてなんですけどテレビでは観たことがあります。実はテコンドーをやっていて格闘技には興味があるし、楽しみにしているのは武藤(敬司)さんなんですよ。武藤さんのパフォーマンス(プロレスLOVEの決めポーズ)が好きなんです」と無邪気に語っていた愛川ですが「プロレスラーは四方からお客さんに見られるから大変ですよね。武藤さんは背中でも表現していて、やっぱりトップのレスラーだと思います」と、人に見られるグラドルならではの視点には感心させられた記憶があります。

そんな愛川がプロレス・デビューを決意したのは所属する芸能事務所のマネジャーに「女子プロレスは、歴史も名前をあるけど、スターがいない。だから、やってみませんか?」と、後にスターダムを旗揚げするロッシー小川氏に紹介されたのがきっかけだったといいます。

愛川引退後、望まれる新たなヒロイン誕生!

「崖っぷちアイドルだった私をプロレスが救ってくれました。プロレスラーの私も、愛川ゆず季も120パーセント活かしてもらいました。華やかで激しくて強いのがグラレスラーです。プロとして憧れてもらえる存在になりたいなと思って続けてきました」と愛川。そして4月29日、両国国技館で「私はプロレス界のシンデレラになって旅立ちます!」と2年半のプロレス生活にピリオドを打ちました。

愛川ゆず季は最後まで貢献してくれました。スターダムが旗揚げからわずか2年3ヵ月にして両国国技館に進出できたのは“愛川引退!”という大きな話題があったからです。主催者発表の観客動員数は5500人。満員マークは付きませんでしたが、女子プロレスの現状を考えれば大成功と言っていいでしょう。

「こういう大きな大会はスターダムの流れだけではできませんが、年に1度、同じ時期にできれば幸せですね。これから1年後の両国を目標に頑張ります。今日は初めて女子プロレスを見るというお客さんが半分以上だったと思いますので、今日をきっかけに今後も会場に足を運んでもらえるようになることが大事だと思います」とスターダムのロッシー小川社長。

この2年半のゆずポン人気はあくまでも黄金時代のプロローグでなければなりません。愛川ゆず季の存在によって人気復活の兆しが見えてきた女子プロレス界がいかにして多くのファンを取り込んでいくのか? 何よりも求心力と発信力のある新たなヒロインの誕生が待たれます。
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