物語る夫婦を解剖したムックも!
例えば第二話「パワースポット」。第一話に登場した一樹の幼なじみ「ムムム」こと、タカラの物語です。航空会社の客室乗務員をしていましたが、突然笑えなくなってしまい退職します。彼女が回復するまでを描いているのですが、会社の後輩の台詞がいいんです。
という。軽い口調です。ここだけ引用してもどこがいいのかわかりませんよね。でも積み重ねられた関係、言われたタイミングによっては宝物のような言葉になるということが、前後を読むと伝わってきます。「幸せになって下さ~い」
最終話まで読むと、タイトルの意味もわかる。何か嫌なことやあったり、疲れたときに、帰りたくなる世界がある。それでいて、不穏なこともさらっと紛れ込んでいる。安易な癒し系とは一線を画した作品です。
木皿泉は和泉務・妻鹿年季子夫妻によるユニット。ロングインタビューや未発表小説、著名人による対談やエッセイが収録された豪華なムック『木皿泉 物語る夫婦の脚本と小説』も発売。併せてオススメです。