乃木坂で『中村好文展　小屋においでよ！』が開催中

現在、東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間で、『中村好文展　小屋においでよ！』が開催中です。

建築家・中村好文氏は30年あまり首尾一貫して、クライアントの暮らしに寄り添った、普段着のように居心地のよい住宅をつくってきました。建物に新奇性や作品性を追い求めることをせず、「主役はそこに住む人たちであり、そこで営まれる暮らし」と考える中村氏の設計思想は、幅広い世代やジャンルの人々に共感され、絶大な信頼を得ています。

「すまい」に自然体で向き合ってきた中村氏が「住宅の原型」として注目し、子供の頃から魅せられてきた「小屋」を通して、「住宅とはなにか？」を問い直します。

小屋の魅力に惹きこまれる「古今東西7つの小屋」

3階の第1会場では、「鴨長明の方丈」から始まり、「ヘンリー・デイヴィッド・ソローの小屋」「猪谷六合雄の小屋」「立原道造のヒアシンスハウス」「高村光太郎の小屋」「堀江謙一のマーメイド号」「ル・コルビュジエの休暇小屋」まで、中村氏があこがれ影響を受けてきた「古今東西の7つの小屋」を紹介しています。

中庭に「究極の小屋」が出現

3階の中庭には、原寸大の「ひとり暮らし用の小屋 Hanem Hut」が展示されています。この小屋は、ここ数年来、中村氏が自身の小屋で実験してきた「エネルギー自給自足型の小屋」を究極のサイズにまで切り詰めたものです。実際にこの小屋の内部に身を置くことで、人のすまいと暮らしの原型に思いを馳せていただく趣向になっています。会期終了後は解体した後、移築されるそうです。

選りすぐりの「小屋的な」住宅

4階の第2会場でまず目に飛び込んでくるのは、中央の麻布で覆われた家型のブースです。内部には中庭に建てられた「Hanem Hut」のスケッチや図面や模型が展示されています。その奥ではその設計と建設工事を記録した映像が流されています。

また、手前の壁には、中村氏とスタッフや友人知人たちが休暇を過ごすための小屋「Lemm Hut」の写真が並んでいます。反対側の壁は中村氏の「小屋遍歴」のコーナー。自作のツリーハウス、極小の住宅など、これまでに設計してきた数ある住宅のなかでも、特に「小屋的な」住宅を選りすぐって紹介しています。

『中村好文　小屋から家へ』も同時出版

本展の開催に合わせて、4月16日にTOTO出版より『中村好文　小屋から家へ』が発行されました。

本書は『中村好文　普通の住宅、普通の別荘』（2010年 TOTO出版）の続編で、「人のすまいの原型は小屋にある」と考える中村氏が手がけてきた極小の小屋から、小屋の面影を宿した小住宅まで12作品を、雨宮秀也氏の撮り下しの写真で紹介しています。

30年にわたり首尾一貫して「普段着のように居心地のよい住宅」をつくってきた、中村流の「すまいづくり」のエッセンスがたっぷりと詰まった一冊です。 ※上記データは記事公開時点のものです。