どんなに痛くても神経痛は、見ただけでは伝わりません。痛みの強さと性状を的確に伝えることが、大切です
痛みの強さを伝えるペインスケール
以前、痛みの強さを簡単にお医者さんに伝える方法として、ペインスケールをご紹介しました。(記事:「患者さんの痛みを評価するペインスケール」)ペインクリニックで最もよく使われるペインスケールは、Visual Analogue Scale(VAS)です。全く痛くない状態を0cmとし、想像できる最悪の痛みを10cmとして、感じる痛みを10cmの直線状にしるしをつけることで、客観的に痛みの強さを伝えることができる方法です。
しかし、見た目に異常がなくても痛みを感じる神経痛の場合には、その痛みの性状や強さ、つらさが伝わりにくいものです。神経痛には、その種類によって特徴的な痛みの感じ方があります。痛みの性質を上手に伝えることで、正しい診断と治療につながると期待されます。
三叉神経痛の痛みを伝える
例えば、三叉(さんさ)神経痛でご説明しましょう。三叉神経痛は、外傷やこれといった原因もなく、突発的に顔面に痛みが起こる病気です。その痛みの性質も様々で、「顔面がえぐられるように痛い」とおっしゃる方もいれば、「顔面のジンジンする痛み」や「電気が走るような痛み」と表現される方もいます。同じ三叉神経痛なのに、その痛みの激しさや感じ方に大きな差があることが特徴です。「風が当たっても死ぬほど痛い」とおっしゃる患者さんと、「顔がちょっとヒリヒリする」とおっしゃる患者さんでは、治療方針が大きく異なることが想像できますよね。見た目には現れない痛みだからこそ、神経痛を正しく伝えることがとても重要なのです。
神経痛をおこす主な病気
痛みの原因には、4つの種類があります。1. 皮膚などに傷ができて末梢神経から脳に伝わる痛み
2. 心のストレスから感じる痛み
3. 末梢神経が傷んで感じる痛み
4. 脳やせき髄の中枢性の痛み
このうち3と4が、神経が原因で起こる神経痛です。
■ 末梢神経が傷んで感じる痛み
帯状疱疹後神経痛、糖尿病性ニューロパチー、複合性局所疼痛症候群、三叉神経痛、アルコール性神経障害、ガンによる神経障害、化学療法による神経障害、手術後の傷の疼痛、神経根障害、栄養障害による神経障害など
■ 脳やせき髄の中枢性の痛み
脳卒中後疼痛、外傷性せき髄損傷後疼痛、腰部脊柱管狭窄症による圧迫性せき髄症、パーキンソン病に伴う痛み、脊髄空洞症、虚血性せき髄症、多発性硬化症による痛みなど
神経痛に特徴的な痛みの性質と表現方法
いろいろな病気でおこる神経痛には、それぞれ代表的な痛みの性質があります。痛みの表現方法をご紹介しましょう。神経痛別に特徴的な痛みの性質があります