痛みのレベルを表すには?医療現場で使用する痛みの評価方法

問診をする男性医師

自分の感じる痛みを、どうすればうまく相手に伝えることができるでしょうか? その方法がペインスケールです

「痛い!」という言葉を聞いたら、あなたはどのような痛みを想像しますか? 転んでヒザを擦ったときの痛み、机の脚に足の小指をひっかけたときの痛み、包丁で指を切ったときの痛み、映画の銃撃戦でおなかと胸を打ち抜かれた痛み。同じ「痛い!」という言葉でも、痛みを訴える人の感じ方には個人差がありますし、実際の痛みの重症度にも大きな幅があります。

医師や医療スタッフは、この患者さんが感じる主観的な痛みのレベルを、さまざまな指標を用いて評価しています。痛みの強さを評価する「ペインスケール」について、実際に医療現場で使用されてる評価方法をご紹介します。

痛みの強さの指標「ペインスケール」の評価方法と問題点

医療現場では、痛みの強度を尺度化、数値化するための指標として、ペインスケールが用いられます。ペインスケールは、患者さんと医療従事者間における痛みの認識合わせを目的として使用されます。信頼性・妥当性ともに検討され臨床の場で広く用いられる反面、いくつかの問題点も指摘されています。 代表的な4つの痛みの評価方法とその問題点を含めて解説します。

■Numerical Rating Scale (NRS)
痛みを0から10の11段階に分けて表します。全く痛みがない状態を「0」、自分が考え想像しうる最悪の痛みを「10」として、今感じている痛みの点数を聞く方法です。
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10段階評価方法のNumerical Rating Scaleは、中等度の認知機能低下患者さんにも有効です


■Visual Analogue Scale (VAS)
10cmの直線を引きます。一番左端0cmの位置を、全く痛みを感じない状態と設定します。一番右端10cmの位置を、考え想像しうる最悪の痛みとします。その条件で、患者さん自身が感じている痛みの強さに近い位置を、直線の上に印をつけてもらう方法です。VASの問題点としては、筆記用具が必要なことや他の方法よりイメージすることが難しいことが挙げられます。
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VASは、臨床で最もよく使われるペインスケールです



■Verbal Rating Scale (VRS)

痛みの強さを表す言葉を5段階に順序よく並べます。自分が感じる痛みを表す言葉として、どれが一番しっくりくるかを、患者さん自身に選んでいただく方法です。VRSは、言葉を理解できない子供や重度の認知症の患者さんへの使用は適していません。また、スケールの段階が少なく、痛みの重症度を細かく評価できない可能性もあります。
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VRSは、5つの評価段階で痛みを評価します。選ぶ言葉が単純で、高齢者にも有効です



■Face Pain Scale (FPS)

人の顔の表情で、痛みを推し測る方法です。あなたの感じる痛みの程度を表す表情はどれですか? と質問して、患者さんに選んでいただきます。子供や高齢者の痛み評価に、よく用いられます。FPSの問題点としては、痛み以外の要因、例えば、評価時の気分や心情を反映してしまう恐れがあること、また、VRS同様、スケールの段階が少ないため、痛みの詳細な評価が難しいことが挙げられます。

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人の表情で痛みを評価するFPSは簡単で、小児にも応用が効きます


 

自分の痛みをうまく訴えられない患者さんの場合は、NRSもしくはVRSを用いるのが良いとされています。一方で、軽度の認知機能低下患者さんにはNRSやVAS、VRS、中等度の認知機能低下患者さんに対してもNRSやVRSが使用可能だったという報告もなされています。

ペインスケールは痛みの共通認識を築く重要な評価指標

患者さんの痛みに合わせた痛み治療では、痛みの評価は重要です。他人にはなかなか正しく分かってもらえない痛み。痛みは、あくまで個人的な主観、体験であるため、患者さんと医療従事者が共有できる評価軸が必要です。「今、この患者さんは、痛みをどのように感じているか?」を、ペインスケールで評価し、画像検査所見や血液検査所見などと組み合わすことで、総合的に痛みを診断します。

患者さんと医療従事者に痛みの共通認識を築くことができれば、的確で副作用の少ない治療を受けられる可能性が高まります。
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