土地活用のノウハウ/入居者ニーズとマーケティング

景気回復は、大家さんにプラスに働くとは限りません!(2ページ目)

平成24年12月に政権が交代し、日本経済は大きな動きを見せています。前政権時代に大きく円高に振れた為替や、値を崩した株価も短期間に値を戻しており、インフレターゲットも2%と明確に設定されました。日本経済は総じて景況感が良くなっており、デフレ脱却への期待が高まりを見せています。長期間の不景気に身を置いていた日本ですが、これを機に景気が回復した場合、賃貸経営にはどのような影響があるのでしょうか。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド


景気の変動は入居者さんにも影響を与えます。

実体経済が回復するためには、賃金のアップが必須であり、そのため、政府は各企業にある程度の賃金アップの要請を始めています。今後、恐らく、多くの企業が賃金のベースアップに踏み切ることでしょう。

しかし、すべての企業が賃金をアップできるわけでなく、出来る企業と出来ない企業との二分化が始まることになり、残念ながら賃金が上がらなかった方々は、景気回復の恩恵を受けられず、増税の影響のみを受けることになります。

また、万が一、景気が底割れてしまった場合には、家賃の滞納者が懸念されます。平成初期にバブルが弾けた時、大量のリストラが行われ、優良入居者が家賃滞納入居者になってしまった歴史がありますので、警戒が必要です。
また、景気の底割れに消費税増税が重くのしかかり、企業の倒産、消費者のマインドの低下と併せて、賃料下落が加速することも覚悟しなければなりません。
民間賃貸住宅undefined家賃変動率

民間賃貸住宅 家賃変動率


世代交代の際に、どれだけ磨かれた状態の不動産を残せるのか。

経済状況は、大家さんの行動指針の一つでしかなく、大切なのは「今、できる対策」を始めることです。それこそが最も効果的なリスクマネジメントとなり、賃貸住宅経営の最大の防衛策となります。

まずは、今後10年の収支計画を立ててみましょう。向こう10年の、賃料収入、空室率、支出等を予測することで、今、どのような対策を打つべきかが見えてきます。

例えば、老朽化が進み小修繕が多発しそうな場合には、早い段階で大規模修繕を行うことで、これを抑えることができます。

また、建て替えを検討した方がよいと判断される場合には、新たな入居者さんとの契約は定期借家契約にし、計画的な立ち退きをすることで、建て替えをスムーズに進めることができます。

その他、立地条件や大家さんの家族環境に不安がある場合には、売却して今のうちに現金化する、もしくは築浅の収益物件に買い替えることも一考です。

いずれにせよ、賃貸経営の成功の秘訣はリスクマネジメントにあります。賃料下落、空室、老朽化などのリスクに対するマネジメントを行うことが、大家さんに求められています。

日本経済は大きな転機を迎えており、賃貸住宅市場も大きく動くことになるでしょう。市場動向、地価、金利の変化に対応すべく、定期的なセミナーへの参加や、インターネットでの情報収集が大切になってきます。

そして、常に念頭に置いておかなければならないのは、土地は永遠でも、大家さんの寿命には限りがあり、必ず世代交代があるということです。いつか必ず訪れる世代交代の際に、どれだけ磨かれた状態の不動産を残せるのか。不動産はあなたの生き方を映す鏡でもあります。

豊かさを次世代に継承させるのか、それとも苦労を継承させるのかは、あなた次第なのです。
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