伝統文化に精通したパナソニック 創始者:松下幸之助

戦後、日本プロダクトが世界標準品となった先駆けメーカー、「経営の神様」と呼ばれ、松下政経塾を設立し、政財界へ多くの優秀な人材を育んだ『パナソニック』の創業者、松下幸之助(1894-1989)。
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経済人である松下幸之助が日本の伝統文化に理解を示し、その普及を支援したいたことはあまり知られていません。
美術品を見る目は持ち合わせていないと言いながらも、実際には、多年にわたり絵画から工芸作品にいたるまで美術品を収集したり、公益社団法人日本工芸会などの団体の役員を務める等、文化支援活動を続けていました。
美術工芸品に造詣が深くなることにより、松下幸之助が作り続けたプロダクト(家電製品など)には日本のものづくりの精神と私たちの暮らしを豊かにするデザインの目線が育まれたと言っても過言ではないでしょう。

伝統工芸は日本のものづくりの原点である

松下幸之助は「素直な心」を生涯大切にしていましたが、その「素直な心」を育てる道が茶道にあるように考えるようになり、茶道具に触れるうち、その関心は工芸家に向けられるようになったのです。
陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、截金(きりかね=細金(ほそがね)とも呼ばれ金箔・銀箔・プラチナ箔を数枚焼き合わせ細く直線状に切ったものを、筆と接着剤を用いて貼ることによって文様を表現する伝統技法)など、様々な素材を駆使し、伝統のわざを絶やさず時代の息吹を取り入れることによって成立する日本の工芸作品。松下幸之助は「伝統工芸は日本のものづくりの原点である」と確信し、このような作品を作り出す工芸家を支援することで、「ものづくりの心」を未来に伝えていきたいと考えたのです。
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特別展リーフレット ●クリックすると拡大します

松下幸之助が収集した日本の伝統工芸品を一堂に会し、紹介する『幸之助と伝統工芸』開館10周年記念特別展が前期、中期、後期の三部期にわたり2013年4月13日から8月25日までパナソニック汐留ミュージアムで開催されます。

開催にあたり、特別展の内容を特別展プレスリリースから抜粋してご紹介いたします。

第一章 素直な心

松下幸之助が出会い、そこに「素直な心」をみた、茶道に係る作品をご紹介します。当時の経済界同胞からたしなみのひとつとして茶道を勧められていた松下幸之助でしたが、実際に彼がたしなみ始めたのは40歳を過ぎてからことでした。しかし、裏千家十四代家元である無限斎宗室との親交を深めながら、裏千家老分を務め、「宗晃(そうこう)」という茶名もうけるなど、茶道は幸之助の生き方の核となっていきました。
一方、使用する茶道具は当時の数寄者たちとは少し異なり、現代作家のものを多く使用していたようです。元来人間そのものに関心の強かった松下幸之助は、「もの」を生み出す作家に興味をひかれたと考えられます。

■『萩茶碗』 三輪休和 作
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『萩茶碗』1967-74年頃 パナソニック株式会社蔵 ●クリックすると拡大します


萩焼の人間国宝、三輪休和(みわきゅうわ)の茶碗。自身が開発した失透性のある温和な白い釉薬「休雪白(きゅうせつじろ)」を使用した上品な白萩茶碗。

■『備前焼餅 平鉢』北大路魯山人 作
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『備前焼餅 平鉢』パナソニック株式会社蔵 ●クリックすると拡大します

京都に生まれた魯山人は陶芸家でありながら、書や篆刻、日本画、漆芸、料理などの分野において、独自の美意識を追求した。牡丹餅と呼ばれる窯変によって生まれた赤い丸紋が効いており、四方の縁が引き締まった褐色の地に、石はぜのアクセント、備前の土肌とその景色を生み出している。

■『黒茶碗 銘 閑談』樂一入 作 
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『黒茶碗 銘 閑談』17世紀 パナソニック株式会社蔵 ●クリックすると拡大します

樂家四代当主、一入による黒茶碗。朱釉がきれいな景色を見せている小ぶりで締まった作品。松下幸之助は一入の茶碗を好んで用いたという。