重度認知症の父に悩まされていた私が
たどり着いた介護用ミトン
ガイドである私の両親は、どちらも認知症の患者です。なかでも症状がひどかったのが父。既に故人となっているのですが、亡くなる3年ほど前、認知症の症状が激しく出ている時期は、昼間に眠って夜になると起きて騒ぎ出す「昼夜逆転」状態になったり、わけのわからないことを大声で叫び続けたり、すぐに興奮して周囲に暴力をふるったりと、とても大変な状態でした。当時、父は認知症のグループホームに入居していたのですが、周囲に対してあまりに迷惑をかけるので、何回も退去寸前まで追い詰められたものです。
さらに悪いことに、グループホームに往診に来てくれていた主治医が、あまりやる気の無い人だったため、なかなか真剣に取り合ってもらうことができませんでした。いつも30秒ぐらい診察しただけで「これぐらい元気なほうが良いでしょ」などと言って、これといった治療をしようともしてくれません。少しでも父の暴力行為を減らしたい。もし暴力行為を働いたとしても、少しでも周囲への迷惑を減らしたいと考えた私は、グループホームのホーム長さんやスタッフの方々と何回も相談を繰り返しました。
昔は、こうした迷惑行為に及ぶ高齢者は、紐などでベッドに縛りつけたり、両腕を後ろに回して固定してしまう拘束衣を着せたりといったことがあったそうです。しかし現在では、そうした人としての尊厳を損なうような行為は認められていません。もちろん私自身も、父を縛りつけたいわけではありませんでした。
悩みのなかでたどり着いた答えの一つが、今回ご紹介する介護用ミトンです。
介護用ミトンを使うことで、周囲に暴力を働いたとしても指が相手の目に入ったり、爪で相手の顔を引っかいたりといった危険性は無くなるだろうということで利用を開始。父がミトンのことを新しいおもちゃと思って気に入ってくれたこともあって、かなりの効果がありました。
介護用ミトンで、認知症による迷惑行為の
多くを防ぐことができる
認知症が重度化すると、父のように暴れるようになってしまう人が少なくありません。また暴れること以外にも、介護する側が困ってしまう行為を繰り返すことが多々あります。
介護する側が特に困る行為としては、次のようなものが挙げられます。
- 大人用のおむつを勝手に外してしまう
- 自分の顔や身体を引っかいてしまう
- ろう便(便をタンスや布団のなかに隠したり、壁に塗りつけたりする)
- 点滴や導尿の管を勝手に引き抜いてしまう
こうした行為を繰り返す要介護者を在宅で介護する場合は、24時間家族の誰かが付き添って見守り続ける必要があるのですが、現実には非常に厳しいものです。どれだけ注意しても繰り返される迷惑行為に家族がキレて暴力をふるってしまったり、身体を縛りつけてしまったりといった悲しい話を聞くこともあります。
介護用ミトンは万能ではありませんが、迷惑行為の多くを防いで介護する側の負担を減らしてくれます。
手や指の状態が確認がしやすい
ファスナータイプ
私が実際に利用していたのが、この「フドーてぶくろNo.1 ファスナー付 M 2枚入」です。ミトンの内部がゆったりしているので、自由に5本の指を動かすことができるうえ、ファスナーを開けて手や指の状態を確認したり拭いてあげることも可能。
父の場合、このファスナーの開け閉めの際に「指、バイバイ! 今日はもう、手はお休み」と教えたら、想像以上に気に入ったようで、暴れることもかなり減りました。
夏場などの蒸れを防ぐ
メッシュタイプ
汗をかきやすい方や、梅雨や夏場などの蒸れやすい時期にオススメなのが「まもっ手 サラサラ(左右1組)」。手の甲の部分がメッシュになっており、通気性抜群です。
手首を固定するベルト部分が紐で結ぶようになっており、腕の太さに合わせて簡単に調整することができます。
衝撃から手を守る
クッションタイプ
手を振り回してベッドの柵などにぶつけてしまうことが多い方には「クッションひらい手」がオススメです。厚めのクッション素材が入っているため、多少ぶつけてもケガの心配がありません。
ミトンの内部には5本の指をそれぞれ入れるポケットが付いており、指と指をやさしく開かせることで手のこわばりを防ぐように工夫されています。また指先部分には通気用の穴があり、蒸れにくいようになっています。
手のこわばりを防ぐ
2ポケットタイプ
長時間ミトンをしていることで、手がこわばるのが心配という方には「まもっ茶手(左右1組)」がオススメ。親指とそれ以外の指を2つのポケットに分けて入れるようになっており、手が自然な形に収まります。
点滴の管などをつかんで抜いてしまったりするのを避けるため、手の平の部分には乾燥茶葉を入れるお茶パックをセット。このお茶パックは、湿気の吸収や消臭といった働きをするのはもちろん、お茶パック自体を握ることで、手のこわばりを防ぐこともできます。
目的はあくまでも、安全の確保
介護用ミトンはとても便利なものですが、要介護者の自由を押さえつけるといった問題もゼロではありません。迷惑行為の内容や頻度をよく見極めながら、要介護者や周囲の安全を確保するために必要だと判断したときにだけ使うようにしてください。使用にあたっては主治医のアドバイスをもらうことも心がけるようにしましょう。
また、高齢者の皮膚は若い人と比べて格段に弱いので、介護用ミトンを利用する際には次のような点に気をつけましょう。
- こまめにミトンを洗濯する
- ミトン内部の手や指の状態を毎日チェックする
- こまめに手や指を洗ったり拭いたりする
- ハンドクリームを利用する