父の背中を見て子は育つ

ワーキングルーム
河村家のワーキングルーム。家族みんなが集う大きなアトリエである

一昔前、家具職人の子供達は、父親が自宅兼工場で家具を作る姿を見て育ちました。木クズに囲まれた暮しの中で、子供達は自然と木に親しみ、見よう見まねで手を動かしながら、父の背中を見て育ちました。こうした環境から、優秀な家具職人や高名な家具デザイナーが生まれました。

やがて家具は工場で作られるようになり、家具職人の家でも、木を切ったことのない子が増えました。家庭と職場が離れることによって、父親の仕事姿をみる機会がめっきり減っています。父親の仕事が何か、具体的に知らない子供の方が多いのではないでしょうか。

問題は、父親の家族に対する思いを感じる機会が減っていることです。仕事をする父の姿を見ることで、子供には父に対する敬愛の念が生まれ、仕事に対する憧れと、いつかはこうして働くのだという自覚が芽生えてきます。こうした思いは生まれついての本能ではなく、自然な教育から身に付くものです。

ワーキングルームという選択

集い
休日は、子供の友人達が集ってくる
建築家河村容治さん(河村工房 )が設計した自邸は、床面積約40坪と、家族5人の2所帯住宅としては決して広くない住宅です。このなかで河村さんが重視したのがワーキングルーム(アトリエ)でした。

河村邸にはリビングや子供部屋がありません。その面積を削って、長さが8mもあるテーブルを置いた、吹き抜けの大きなワーキングルームをつくりました。そこは家族全員に開放されていて、ひとりひとりが使うパソコンが並んで置かれています。

夕食が終わると。家族はここに集ります。河村さんは設計の仕事を行い、子供達は学校の勉強や書道、ピアノの練習をします。奥様はボランティアの玩具作りやビーズ細工を行います。特に机が分れていないので、各人が必要なスペースを必要な時期に利用してきました。

例えば、長男が受験勉強の時期は、優先してスペースが割り当てられました。そして大学に進学して下宿生活がはじまると、兄のスペースを弟が使い始めました。このようにワーキングルームは、家族の変化に対応して、柔軟に使われてきました。

次のページ で、子供をニートにしない工夫を紹介します。