狭小住宅/狭小住宅のすすめ

住めば都、狭小住宅という贅沢(2ページ目)

立って半畳、寝て一畳。生活できる極小面積を追求すると一畳大にたどり着きます。それはオーバーとしても、狭小住宅にはそれなりの楽しみがあるのです。

塩野 哲也

執筆者:塩野 哲也

空間デザインガイド

天井は思いっきり高く。採光は上から

階段
狭小住宅を成功させるポイントのひとつは、階段部分を採光に利用すること。写真の階段はわずか1坪に設置できるUターン式の階段。カツデンアーキテック
狭小住宅を込み入った住宅地に建てる場合に問題になるのが採光です。隣家とのあきに隙間がなく、採光がとれない場合が大半です。こうしたケースには、天窓の使い方がポイントになります。

2階建て、3階建て住宅での採光のポイントは階段です。螺旋階段を中心として、最上部に天窓を設けると、階段が光のダクトになります。階段の踏み板をグレーチング(格子状の板)や強化ガラスにすることで、その効果は倍増します。

例えば、同じ6畳間でも天井の高さによって空間の感じ方は大きく変わります。天井の高さを自由に設定できるのは、一戸建て住宅ならではの贅沢です。寝室を天高6メートルの吹抜け空間にしたり、わがままを楽しみたいものです。

コンパクトラグジュアリーな家という考え方

コンパクトな家だからこそ、コンパクトラグジュアリーな家を目指しましょう。狭い家=ローコストではありません。狭い家は、設備に掛かるコストの割合が増えるので、面積あたりの坪単価は広い家に比べ必ず高くなります。

坪単価という考え方はやめて、全体の豊かさにどれだけのコストを投資できるかを考えることが必要です。例えば3畳ほどしかない小さな茶室で何時間も快適に過ごせるのは、内装材に工夫を凝らしているからです。自然材料をふんだんに使った室内は、それ自体が上質な家具のように身体を包み込んでくれます。

狭いからこそ、材料の量が少なく済み、上質な材料を使えるともいえます。また設計する際も、大きな家に比べ隅々までをきちんと検討できます。しかたなく小さな家と考えないで、積極的に「上質な狭い家」を楽しんでみてはいかがでしょうか。

デザイナーズ狭小住宅

ムナーリ
ブルーノ・ムナーリのアピタ・コロ。ワイヤーフレームはテーブルだけでなく、ベッドにもなる。Shiodome italiaクリエイティブセンターで開催されたブルーノ・ムナーリ展会場。
イタリアのデザイナー、ブルーノ・ムナーリによる「アピタ・コロ」(ちいさなへや)は、ワイヤーフレームで組んだユニークな家具です。昼は作業テーブルとして、夜はベッドとしても機能します。まさに狭小生活をコンパクトに納めた家具です。こうしたシンプルで機能的なアイデアがこれからの住宅には活かされていくでしょう。

ちなみに、日本人が開発した世界でもっとも効率的な宿泊施設「カプセルホテル」は、都知事選でも話題を呼んだ建築家の故・黒川紀章氏のデザインです。その背景には、黒川氏や菊竹清訓氏が提唱してきた「メタボリズム建築」があります。銀座の「中銀カプセルタワービル」は、まさに狭小住宅をジョイントした集合住宅といえます。興味のある方はぜひご覧ください。

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